「雪見障子」by id:momokuri3


以前泊まった民宿に、雪見障子がありました。雪見障子とは、障子の下半分がガラスになっている障子のことです。多くの場合、ガラス部分にはスライド式の小障子が付いていて、ガラス越しに外の景色を楽しむのも、外から覗かれないように目隠しするのも自在の構造になっています。私が泊まったのは夏でしたから「雪見」ではありませんでしたが、雪見障子から眺める夏の庭も風情のあるものでした。特に日本の暮らし特有の畳に座った位置から眺める光景は、立って見る景色とは別世界です。また、障子の柔らかな光と、ガラス越しに目に飛び込んでくる外の景色のコントラストの美しさも感動物でした。
http://www.kbookmark.com/archfile/barrierfree/barrierfree073.htm...
この粋な障子は、ガラスが使われていることから考えて、当然のことながら板ガラスが庶民生活に普及した後に生まれた物です。詳細な歴史はちょっとわかりませんが、初登場は昭和初期と言われているようです。
昭和初期。たとえば昭和10年あたり。もうそのころには芥川賞直木賞もありましたし、学生サッカーの大会もありました。アニメの高畑勲監督などもこの年のお生まれです。昔といえば昔ですが、それでも現代の文化とひとつながりになっている時代。その時代に新たな障子が考案され、それが一つの文化になるくらい普及していったということ。障子が現役だった時代は、手を伸ばせばすぐ届くくらい現代に近い時代だったのだということ。これは大きな驚きです。
いったいいつごろから、あらゆることが大きく変わってしまったのでしょう。おそらく戦争による破壊と、その反動のようにおとずれた高度経済成長の波が、暮らしへの激変をもたらしたのでしょうね。
もし日本が戦争をしていなかったら。歴史にifは禁物と言いますが、もし昭和初期の文化が途絶えることなく現代につながっているパラレルワールドがあるとしたら、その世界のイエとイエコトは、こちらの世界とどう違っているのでしょうか。
そんなことを考えていたら、また雪見障子のある宿に泊まりに行きたくなってしまいました。雪の季節に、本当の雪見障子を楽しんでみたいと思います。また将来はこんな障子のある家を建てたいとも思います。


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