「ショック!!万引きと間違えられた!!」by id:Fuel


まだ中学生の時のことでしたが、オタクな私はよく模型ショップに通っていました。でも中学生ですからお金がありません。いつも何も買わずに見ているだけだったのが疑惑を呼んだのでしょう。そのころ、その店にはしつこい万引き常習者がいたそうです。大きな物は盗めませんが、小さなフィギュアならひょいと盗めます。他にも小瓶に入ったペイントなど、ちょっと手に隠せば持ち去れるようなものが店内には色々ありました。ちょうどそんな小物を手に取った瞬間、後ろから伸びてきた手に、グイッと肩を掴まれました。そして有無を言わせず、奥に連れ込まれてしまいました。いやもう、恐かったこと、恐かったこと。私は理由がわからなかったので、思わず助けてと叫んでしまいました。
すぐに嫌疑は晴れましたが、あまりに驚いたのと、店頭で何人もの人が見ている前で恥をかかされたという思いが複雑に交錯して、情けない話ですが、無罪放免になった後、近くのトイレに駆け込んで、堪えきれずに泣いてしまいました。
しかしその後です。やっと少し落ち着いてトイレから出ると、私の姿を見つけた店長が駆け寄ってきて、済まなかったね、店内のどの商品でも好きな物をプレゼントするから遠慮無く言ってよ、というのです。
そんなこと言われたら、万の位の商品が欲しくなるに決まっています。しかしいくらなんでもそこまで要求したら万引きより極悪な気がしたので、そんなのいいです、そのかわりこれからも何も買わないけどお店にきていいですかと言うと、それならと、バイト用のネームプレートを一つ、私に手渡してくれました。これからは身内扱いで歓迎してくれる、ということです。こんなにうれしいことはありません。
それからというもの、ずいぶん長くそのお店に通って、最新の模型情報を手に入れたり、模型作りのコツを教えてもらったりしました。店頭展示用のモデルを作らせてもらったりしたこともありました。これはとても名誉なことでした。今思うとこのお店が、私の物作り好きの芽を育ててくれたんですね。人間何が幸いしてすてきな人脈や、すてきな出来事に発展していくかわかりません。
なお、私の事件以降、万引きはピタッと止まったそうです。私が捕まった様子を犯人が見ていて、恐くなってやめたんじゃないかと言われました。あの時私は、そのくらい悲惨な様子だったわけですね。とにかく結果は万引きもなくなって、めでたしめでたしでした。


»このいわしのツリーはコチラから