「ライブでギターの弦が切れた!!」by id:TomCat


その日のライブは、ちょっと特別でした。私は、突然入院してしまった友人のピンチヒッターとしてギターを握っていたのです。数曲演奏してギターのソロに入った所で、ピキン・・・・と2弦が切れました。


2弦。細い方から二番目の弦です。1弦のような端っこの弦が切れるなら、運指的には連続した部分が残りますから、大した問題にはなりません。しかし2弦のような中途半端な所が切れると、音程に隙間が出来てしまい、それを運指でカバーするのは、ちょっと厄介なんです。


そこでふと、ベーシスト、細野晴臣さんの言葉を思い出しました。
「ステージで弦が2本切れたらどうしますか?」
「3本切れなかったことを感謝するだろう」


名言です。


ああそうか。俺はまだ5本も弦が残ってる。5本残っていれば運指なんてどうにでもなる。そう考えると、急に気持ちが楽になってきました。ここは慌てず騒がず、押さえる位置を4フレット上げ、2弦で弾くべき音を3弦にシフトさせます。ここまでは誰でもやるリカバー。さらにここからが「切れたのが2弦でよかった!!」になっていくんです。


ギターを弾く人は分かると思いますが、2弦が切れて3弦と隣り合うことになった 1弦は、3弦の桂馬飛びになる位置が、ちょうど1オクターブ上の音になりますよね。オリジナルにはないこの1オクターブ上の音を同時に弾いてやることで、ハードなフレーズの中に、ジャズギターの巨匠 Wes Montgomeryのギターのようなファンキーさが加わったんです。思わぬかっこよさに、弾いている本人もビックリ!!


ギターを弾かない人には何のこっちゃの話になってしまっていると思いますが、要するに、嫌な所が切れてくれたお陰で、思わぬ効果的なフレーズが編み出せた、というわけなんですよね。


楽に対処できる所が切れたのなら、対処の結果も平凡なものに終わっていたでしょう。しかし対処が面倒な所が切れてくれたお陰で、ただのリカバーが新しい創造につながっていったわけです。


入院している友達にも、その時の録音を聞いてもらいました。そしたら、このアレンジ俺も真似させてもらうぞと、とても喜んでもらえました。よかった♪


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