イエ・ルポ 2

「地デジが切っ掛けのふれあい」by id:momokuri3


散歩していると、初老のご夫婦が庭で何かを話していて、聞くともなしに聞いてしまいました。どうもテレビが映らないので、アンテナが悪いのかと見上げている様子です。目が合ったのでご挨拶すると、知り合いから地デジのチューナーを譲ってもらったので取り付けてみたが映らないというお話でした。
屋根を見るとVHFのアンテナしか付いていません。地デジ用のアンテナは?と聞くと、そんな物が必要なのかとのお言葉です。原因はこれだと思い、ちょうどうちに余っているベランダ取り付け型の小型アンテナがあったので、それをお貸しすることにしました。
ちょっと待っていてくださいと家にアンテナを取りに行き、工具も持参でちゃちゃっと取り付けると、見事に映りました。ケーブルの引き込みは未使用のエアコン用の穴が使えそうでしたが、それはこちらのご主人に作業してもらうとして、無事映ったのでおいとましようとしたら、引き止められました。
お茶が出て、お菓子が出て、ご主人がおっしゃいました。共稼ぎと家事で長い間忙しい日々を送っていた奥様に、退職した今こそゆっくり高画質のテレビを楽しんでほしいと思った、そう知り合いに話したらこのチューナーを譲ってくれたのだが映らなくて落胆していたと。やっと映るようになって嬉しいと、それはもうこちらが恐縮してしまうほど喜んでいただきました。たかがテレビじゃなかったんですね。テレビも見る時間がないほど働いてきた奥様への思いやりがこもっていたんです。
そのお宅とはちょっと離れていたので、それまでは顔を合わせれば挨拶するくらいのお付き合いしかありませんでしたが、こんなことがきっかけで、とても親しく交流するようになりました。アンテナは結局、私はもう使わないので差し上げることにしました。そしたらお返しにと、磯釣りの新鮮な魚をドカッと。このご主人は趣味が磯釣りだったのです。クロダイメジナ、アジ、サヨリ、などなど、立派な釣りたての魚が2ヶ月に一度は定期便のようにやってきます。こんな物ではまだまだお礼にならないとおっしゃいますが、いえいえ、こちらこそ安物のアンテナで、海老で鯛を釣った状態です(笑)。
それにしても、地デジへの切り替え、もっとサポートが必要ですね。こんなふうに、電気店で買わずに地デジに移行する人もいるんです。うまく映らない時、どこに聞けばいいかわからずに悩む人もいるんです。ここに頼めば訪問して懇切丁寧にやってくれるよといった、特に高齢者向けのサービスはあるのでしょうか。もしかしたら各地域にボランティアの「地デジお助け奉仕団」みたいなのが必要かもしれませんね。
本来なら政府の責任でテレビ弱者を出さないことが大切だと思いますが、こういうことから新しいご近所付き合いの輪が広がるとすれば、それはとてもいいことだと思います。