「父の走り書き。」by id:hanatomi


白い紙にゆらゆらした字で
 オレンジジュース 
  が 
 飲みたい。


それだけですが、我が家の大切な大切な記念の品となっています。


父は脳いっ血で9年前に倒れました。
脳外科に運ばれたのですが、半日におよぶ大手術の後、麻酔が切れた時点で再出血をして
再手術となりました。そのため、その前に一度家族を集められ、無菌の服を着せられて、もう会えないかも知れないと、再会をさせられました。ショックで私は泣くばかりでした。
それから、さらに数時間におよぶ手術。早朝から手術をはじめて、終わったのは午後になりました。
このような大変な手術のため、外来は全てストップして、待合いは患者さんで溢れかえりました。
手術室の前で長い長い間待つわたし達を、手術で良くなった患者さんが励ましに来てくださいました。
手術が終わり、何日もか経った後、管を入れられた父が、手で書く仕種をするので、母が紙を持っていくと、「オレンジジュース  が  飲み た い 」
そのオレンジジュースというのは、実際にオレンジを搾った母特製のジュースのことです。
その紙を見たとき、本当に嬉しかった。
父は頭をボルトで固定されていて、あちこちにくだを通されていて、喉が乾燥してヒリヒリと痛くて頭もガンガンに痛かったので、久しぶりに飲み物が飲みたかったそうです。
あれから何年も経ち、後遺症はありますが、今でも元気でいてくれている父、そして、神棚に飾っているこの走り書きは、我が家の思い出の宝物です。


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