物語のついた愛しいモノたち!我が家の思い出の品

#024 お題
物語のついた愛しいモノたち!我が家の思い出の品」を教えて下さい


“ルポ・タイトル”
「母の恋心が花と咲いた着物」by ハザマ


ルポルタージュ
今年の夏、母からいくつか譲り受けてはじめた着物。そのなかに、私にも関係のある、特別に大切な着物がありました。その物語は、長らく閉じたままになっていた着物箪笥を母と一緒に開けてはじめて聞かされたものでした。


これは幼い頃にイエで着ていた記憶があるよ、あぁこれは小学校の入学式の写真に写っていた羽織だね、などと話しながら見ていくうちに、これは全く覚えがないなぁという着物がいくらか出てきて…わぁ、これ一番好き!ちょうだい!と思わず私が声を上げたのが、やさしい象牙色の地に渋いピンクとグリーンのカーネーションが織り込まれたモダンな感じの訪問着でした。
こんなのいつ着てた? 聞くと、母が二十歳を過ぎた頃にはじめて自分で選んで仕立てた着物で、独身時代にとても気に入って着ていたそうです。あぁやっぱり親子、好みが似ているのかな…私もこれをはじめて自分で着る着物にしたいな、と思ってひらいていると、「結婚する前にお父さんと会う時にもよく着たものよ」と母。え? お父さんとデートの時に? 「そうよ、これを着てよく喫茶店で待たされたものよ」。それは父も好きな姿だった、父母の恋愛時代の思い出の着物だったのです。結婚してからも少し着たそうですが、間もなく私が生まれ、それからは娘時代の思い出として大切にしまってあったのだそうです。


よく着て、ずっとしまってあったというだけあって、その着物には象牙色の地の部分にたくさんシミが見られて、そのままではちょっと着られない状態でした。でも私はどうしても着たくて、シミ抜きに出して…つい最近のこと、はじめて自分でお太鼓をしめる時に着ることが出来ました。古いシミなので完全には取れていないところもありますが、それも気にならないほどお気に入りの、私にも特別な着物になりました。
うふふ…母はこの着物姿で恋を花ひらかせ、そして私が生まれたんだな…。ピンクとグリーンのカーネーション模様を眺めながら、何だか幸福な気持ちです。私もいつかお嫁に行きたい気持ちになった時、きっとこの着物を着てその人に会うんだもん。二十歳過ぎの娘時代とは言い難い歳だけど(笑)、そんなロマンティックな思いを抱かせてくれる大事な大事な着物です。


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※今回のピックアップ賞は11月28日(金)に「イエはてな」にて発表いたします。
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