「森、果樹園、浜辺がひとつになった公園」by id:asukab


市内に砂浜のある市立公園はいくつかありますが、一番のお気に入りは、海岸沿いを列車が走る公園。もう何度もここで書かせていただいている場所です。公園と書くと何だか整備された人工的な広場を想像されるかもしれませんが、ここは本当に昔のままの姿で残っています。昔とは、最初の土地所有者が果樹園を営みながら暮らしていた頃(1920年代)の姿。その後、バーベキュー用の木机、ベンチや子どもの遊び場が加えられたりしますが、森の自然道、砂浜、潮溜まり、果樹園は昔のままです。さらさらの砂浜で潮風に吹かれるもよし、子どもといっしょに潮溜まりの不思議に触れるのもよし、森林浴をしたければ森に入るのもよし。ひとつの場所で自然の多様性に触れることのできる、とてもぜいたくな場所です。
わたしのお気に入りは晴れた夏日にカモメの声を聴きながら、流木に腰掛けて潮風に吹かれること。子どもたちが赤ちゃんの頃からよくここにきて、のんびりさせてもらいました。内海なのでフェリーが行き来したりしますが、船とカモメと砂の白がまぶしくて、これもまた心が喜ぶ原因ですね。足の裏の乾いた砂が適度に熱く、これも気持ちがいい。空と海の境界線に目をやれば、淡いブルーに包まれた自然の美しさに感謝せずにはいられません。隣りでは子どもたちが流木を使った小屋を立て、石を並べてままごとなどをしています。
潮溜まりの冒険も楽しい。わたしは当地に来るまで、tide pool(潮溜まり)の存在すら知りませんでした。山国育ちのこともあってか、海といえば岩場か砂浜しかないと思っていたのです。ところが満ち潮と引き潮の間に潜む、この小さな自然界の姿に魅せられて以来、見たこともない軟体動物や甲殻動物の生態にけっこう夢中です。赤、紫、黄色、オレンジなど鮮やかな発色で蠢くヒトデやイソギンチャク、アネモネの生命の不思議を子どもたちといっしょに学んでいます。
森の自然は、温帯多雨林(the temperate rain forest)の姿そのままです。レインフォレストとはアマゾンのみを意味するのかと思っていましたが、ここは温帯レインフォレストに属し、独自の生態系を築いています。ひんやりとした緑がさわやかで、いったん足を踏み入れるとなかなか帰りたくなくなってしまいます。
う〜ん、これだけいろいろあると、ナチュラリストにはたまらない場所ですね。まだまだ知らない自然の姿がたくさんあるので、時間を見ては家族と足を運びたい場所です。何はともあれ、ほんの身近なところに豊かな大自然が存在し、訪れるたびに元気になれる――この事実に心から感謝しています。
子どもはもちろん、西海岸を南北に走るとんでもなく長い列車も大好きです。鉄橋の上から下を覗くのが、また楽しいエンタテイメントになっています。


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