「何でも欲しい物を〈言うだけ言ってみな〉という父」by id:momokuri3


クリスマスもそうでしたし、誕生日もそうでした。テストの点が良かった時も、展覧会で賞をもらった時もでした。父は決まって、お祝いに何が欲しい?言うだけ言ってみな、と言うのです。
この「言うだけ言ってみな」がミソです。これは普通では手に入りそうもない物や、子供が持つような物でない物でも、事情によっては考えてくれるという合図です。
子供はその時の興味しだいで妙な物を欲しがるものです。ある年の誕生日にはタコ焼き器が欲しいと言い出して、誕生パーティーはタコ焼き大会になりました。先が尖っていない安全な千枚通しの付いた電気タコ焼き器プラス材料一式、さらには熱を使う道具なので必ず親と一緒に使うことと注意書きの入った「お父さんお母さんのタコ焼き付き合い券」までセットにして贈ってもらいました。
またある年のクリスマスには、「いかにも魔法の力が宿っているような石が欲しい」と言い出しました。イメージとしては天空に浮かぶ島の浮遊エネルギーの源になっているような石です。私は絵を書いて説明しました。熱を込めて説明をしたら、父はそうかそうかと頷きながら聞いてくれました。どうせこの世に存在するはずのない物ですから、私はそれだけで満足していました。ところがイブの当日、父はいかにも魔法の箱のようなデザインの小箱を手渡してくれたのです。蓋を開けると、半分透き通るような緑と赤のストライプの細長い石が入っていました。添えられたカードには、電気石、またの名をトルマリン、結晶に熱を加えると電気エネルギーが発生する、石言葉は希望、と書かれていました。まさしく私が求めていたのはこういう石でした。驚いて感動して、お父さんてもしかして魔法使い?と聞くと、親は子供のためなら誰でもちょっとくらいの魔法は使うさ、と言っていたのが今でも心に残っています。
こんなふうに、叶うと思わないような願いをサプライズを添えて叶えてくれるのが、父のお祝いの流儀でした。それは私が大人になってからも、様々に形を変えながら続いています。


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