「小説」by id:asukab


主人が小説を書いています。もうかれこれ5、6年ぐらい経ち、この夏に脱稿を目指したいと言っていますが、どうなることやら……。
きっかけは、義父の書いていた趣味のSF小説でした。他界後、書きかけ小説のことを知り、息子である主人が終らせようと手を加え始めたのです。つまり正確には、親子合作のエンタテイメント小説になります。
米国の出版システムには、エージェントという執筆者と出版社を取り次ぐ職業が存在します。これは音楽業界にもある職業で、たとえばミュージシャンが自作テープをエージェントに送り、目に留まったらレコード会社やラジオ局に紹介してもらえるといった流れがあるとのことです。友人に教員をしながらジャズピアニストをしている人がいて、彼の場合200人にデモテープを送り、返答はひとつもなかったということでした。つまり、それほどクリエイティブ産業は狭き門なのだということなのですね。ところが主人の場合、たった8人のエージェントにとりあえず仕上げた上記の小説を送ったところ2人から返答がきたのです。1人はニューヨーク在、もう1人はロサンゼルス在のエージェントで、指定の料金を支払い、ロスのエージェントと1年間契約を結びました。幸か不幸か、これを機に主人は「いけるかも!」と思ってしまったのですね。確かに200人に出して誰からも声がかからなかった例を思えば、8人にコンタクトを取り2人から連絡がきたということは、かなりの高率で出版への門戸が開かれたことになりますから。
しかし、世の中そうは甘くありません。原稿はかなりの編集作業が必要で、1年契約では足りないほどでした。というわけで、契約は切れ、その後は地元のエージェントと面談し、直接会って編集作業を行う手順を取ることになります。そうして、何年経ったのか。毎年、新年の抱負に「脱稿」が挙がるようになってしまい、「もうそろそろ諦めどきかもしれない…」なんて周りのほうが感じ始めてしまい…。
現在はこの夏の脱稿を目指し日々、教員生活と執筆生活を送っています。ここ数年の経験から大手出版社から出すには時間のかかることを実感したようで、今はコンピュータ出版を利用した格安の自費出版を目標にしています。このステップを踏んで大手に認めてもらう作家も随分と多いそうなので。
ベストセラーになったら…なんて夢を描いていたときもありましたが、現在は「執筆、編集作業から多くの視野が広がった」と費やした経験に感謝しているようです。書くことが楽しいのに変わりはないので、長編小説に早く区切りを付けて、次は短編にしたいと言っていますが。
わたしはとにかく脱稿を祈るのみ。そうして夏はみんなで温泉にいきたいなあと夢描いています。でも、親子合作のエンタテイメントSF小説、いい思い出といえば思い出になりますね。彼にとっても父親の意思を継ぐ、意義のある執筆生活だったのでしょう。


翻訳まで出せる作品だったら、夢のようです。初めの頃は、「映画化されたらどうしよう」などという雲の上の話までしていました! でも本当に主人の忍耐力には感服です。エージェントの方によると、たいていの人はこの編集過程であきらめてしまうそうです。うちの場合、500ページの長編を300ページに削る作業なので、わたしだったら考えただけで投げ出してしまいそうです。
翻訳、できたらいいですね。主人からも頼まれたのです。でも、まずその前に出版ですね。もし娯楽SF小説がお好きであれば、ぜひお読みください。アマゾンでの流通はわからないのですが、Barns & Nobleでは取り次がれるそうです。


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