「ボクとネズミさんごめんなさい、の思い出」

「ボクとネズミさんごめんなさい、の思い出」by ハザマ


あれは私が小学5年生、弟が2年生くらいだった時のことだと思います。その当時うちには猫が一匹いました。なのにある日突然、弟がネズミをもらってきたと言って、カゴに一匹入れて持って帰ってきたのです。父母も私も、猫がいるのにネズミなんて!返してきなさい!と怒りました。弟は猫にネズミがいけないというのがよくわかっていなくて、これは僕のネズミだから返したくない、いけないのなら自分の部屋で飼う、と言って聞きませんでした。そして数日の間、部屋でお水やエサをあげて大切にしていました。
ところが、1週間とたたないうちに、やはり猫が弟の部屋に入ってしまい、気がつくとネズミさんは猫のツメにやられて死んでしまっていました。唖然とする弟に、私は言ってしまったのです。「だから言ったでしょ、ネズミが死んじゃったのはボクのせいだからね!」。…弟はその晩、ネズミのカゴと一緒に部屋から出てこず、一人で泣いていました。私も何だか胸がチクチクしてきて、自分が心ないことを言ってしまったと気づきました。弟はきっと、ネズミが死んでしまった悲しみだけでなく、自分が猫のいる家に連れて来てしまったから、言われた通りになってしまった、とそのことで何も言わずに泣いていたのです。それがわかって、ネズミを大事に育てようとしていた弟になんてヒドイことを言ってしまったんだろうと私も辛くなりました…が、その時は弟に謝れませんでした。弟がネズミさんを土に埋めに行く時も、一緒に行けませんでした。逆に意地を張ってしまって。心の中で、ボクとネズミさんごめんなさい、と言いながら、黙っていました。
そのことをちょっぴり謝ったのはもう大人になってから、実家でその話題が出た時。笑いながら聞いていた弟に、「私もあんなこと言ってヒドかったよねー」としか言えない私!まったくどこまで意地っ張りなんだと今でも思いつつ、人の心の痛みを教えてくれた弟にごめんなさい!ありがとう。たぶん、全部言わなくてもわかってくれてると思うんだけどな…とまだ甘えてる悪い姉なのでした!


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