「母のUFO目撃事件」by id:TomCat

私の母は、あまり健康な人ではありませんでした。痩せ型で顔色もあまり良くなく、いつも何かしらの薬を飲んでいたというのが、小さな頃の母の印象でした。

さて、私が小学校の4−5年生くらいの頃だったでしょうか。そんな母が、自転車を欲しいと言い出しました。季節もいいし、自転車で颯爽と走ってみたいと。

まだその当時の母はお世辞にも颯爽と自転車を走らせるようなタイプではありませんでしたので、私も父も、ぶっと口の中の物を吹き出してしまいそうに驚きました。

でも母は、これでも学生の頃はずっと自転車通学だったし、かなり遠くまでサイクリングに行ったことだってあるのよと力説しています。で、翌日、ピカピカのママチャリが届いていました。

母は子供みたいに喜んで、ほら上手でしょと家の前の道を行ったり来たりして初走行を見せてくれましたが、なんかヨタヨタして危なっかしかったです(^-^;

さて、ここからが本題です。それからしばらく経ったある日の夕方。学校から帰ると、テーブルの上に夕食の買い物に行ってくるとメモが置いてありました。自転車、活躍中です。が、なんか危なっかしい姿を想像して、事故でも起こさないでくれよと思いながら帰りを待っていると、母が泣きながら帰ってきたじゃありませんか。うひゃ!! どうした!! 事故か!!

玄関先にへたりこんだ母は、かなり興奮していました。やっと落ち着いて部屋に上がった母は・・・・。

「UFOを見た!!」

ああ?焼きそば? とにかく事故ではなかったので安心して私は笑いましたが、母は真剣です。オレンジ色に光る物体が後方から近付いてきて、サーッと通り過ぎて、目の前で方向転換してジグザグに飛んでから去っていったと。

私はまだ見えるかと、慌てて庭に出てみました。母も一緒に出てきました。もちろん何も見えませんでした。

母は、父が帰ってきてからも、UFO目撃談を、そりゃー熱を込めて語っていました。父は火球(流星の特に明るいもののこと)ではないかとニュースに注目していたようでしたが、火球目撃情報は全く流れていなかったようです。そして母が言うには、隕石よりは大きそうな感じで、燃え尽きるか落下して消えたのではなく、遠くに飛び去っていったと言うんです。

とにかく、いったい母が見た物はなんだったのかは、全く謎のままで終わりました。ただその後、母の行動半径はどんどん広がって、青白かった顔色にも赤みがさして、とても元気になっていきました。もしかするとUFOと併走した母に、宇宙人がご褒美をくれたのかもしれません(^-^)

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