「パンの焼ける香りと猫のにおい」by id:MINT

今はすっかりパン焼きにこっている私ですが、子供のころは、パン焼きは母の独擅場でした。私は、ぶわーっとふくらむ生地をふしぎだなぁとのぞき込んだり、たまーに生地をこねこねして形を作らせてもらうだけ。オーブンに火が入るとキッチン全体が温かくなってきて、そしてパンが焼けてくると、おいしそうな香りがあたり一面に広がります。私は椅子に座って、じーっとオーブンを見つめながら、あったかくておいしい空気を楽しんでいました。
もうひとつ大好きだったのは、猫の匂いです。猫はあまり匂いがありませんが、お日様をいっぱいに浴びた猫は、かすかに干した藁のような匂いがします。猫がお腹を横にして寝ていると、私はお腹の柔らかい毛にボフッと顔をうずめて、いっぱいに猫の香りを吸い込みました(本当は動物とは、こんな濃密すぎる接触はしない方がいいんだろうと思います。よい子はまねしないでくださいね)。
パンの焼ける匂いと猫の匂い。これが私の子供のころの幸せの香りでした。今。パン焼きの香りは自分で作れるようになりました。猫の匂いだけが足りません。

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