「父の書く掛け軸」by id:tough

わが家自慢の無用の長物は、父が揮毫する掛け軸です。本人自らが、また無用の長物を書いちゃったよ、すまんなと笑っていますから間違いありません。ちなみに色紙や短冊に揮毫する場合、父はそれを「無用の短物」と呼んでいます。
父の書道歴は長いのですが、特に誰について習ったというようなことはなく、完全に自己流のようです。以前は書展などにも出品していたようですが、特に何の賞を取るわけでもないので、今は全く出していません。それでも純粋に書くことが好きなようで、今も折に触れては筆を握っています。
父はいつも、表装済みの白紙の掛け軸に書いていきます。本当なら何枚も書いて一番いいものを表装して掛け軸に仕立ててもらうのでしょうが、父はやり直しのきかない一発勝負の緊張感がたまらないと、好んで白紙の掛け軸に向かっています。こうしてわが家には次々と掛け軸が貯まっていきます。
でも私は父の書く字が好きです。上手いかどうかはわかりませんが、独特の味があります。勢いがあるいい字だと思います。本人は絶対に家の中に自分の作品を飾りたがりません。だから自分で無用の長物と言っているわけですが、私は将来、父の書いた物を一点譲ってもらい、それを掛けてみたいと思っています。

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