「泥棒?」by id:mekishiko

10年以上前の話です。
実家で番犬になるような大きな犬を飼っていました。
犬小屋はリビングの大きな窓(すりガラス)から出た
すぐわきにあり、我が家ではもっぱらその窓を出入口として
利用していました。玄関はつねに施錠しっぱなし、
番犬のいるその窓を施錠しないで出かけていたのです。

さて、ある日のこと、帰ってくるとその窓が開いていました。
ま、まさか泥棒?と思い、おそるおそる家に入ってみますが、
全く異常がありません。最後に出た人が閉め忘れたんじゃないか
ということになり、いちおう一件落着となりました。
しかし、次の日、帰ってくるとやはり窓が・・・。
今度こそ泥棒か?と思い家中を調べましたが異常なし。
その夜、我が家では怪事件として話題になりました。
しっかりした窓なので、簡単には開くはずがないのです。
にもかかわらず、なぜ窓が開いているのか?
さて、翌日、体調の悪かった私は学校を休み、2階の自分の
部屋で寝ていました。私以外の家族はすべて出かけていました。
お昼ごろ目が覚めて、何か食べようとリビングに下りていった
時、例の窓の外になにやら影が・・。
とっさに物陰に隠れて様子をうかがっていると、
信じられないものを目撃してしまったのです。

誰かが一生懸命に窓を開けようとしていました。
ゆっくり窓が開いてソロソロと入ってきたのは、犬でした。
そして、じゅうたんの上ですっかりくつろいでいました。
そうです、窓を開けていた犯人は犬だったのです。そして
家族が帰ってくる頃を見計らって外に戻り、何事もなかった
ような顔をして家族を出迎えていたのです。犬にしてみれば
完全犯罪だったようですが、窓は閉められなかったわけです。

その夜、家族会議が開かれました。犬もやっぱり犬小屋より
本物の家の方がいいんだね、ということで全会一致。
それ以来、夜だけは犬も家の中で過ごすようになりました。
そして夜の家族の団欒には欠かせない存在に。

残念ながら、昨年高齢のため亡くなってしまいましたが、
あのリビングの窓を見るたびに、今でも犬が手で窓を一生懸命に
開けている姿が目に浮かびます。
このことは我が家では今でも語り草になっていて、話題に出る
度にほのぼのする大切な思い出です。

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