自分を育ててくれたアイツと友情…宿命のライバル物語

#038 お題
自分を育ててくれたアイツと友情…宿命のライバル物語」を教えて下さい


“ルポ・タイトル”
「アマチュアのロック魂に火がついたレディース決戦!」by ハザマ


ルポルタージュ
レディースといっても暴走族ではありません(笑)。ロックです、高校・大学と本気をかけたバンドです。
時は80年代後半、空前のバンドブームのさなか。高校2年生で結成したレディースバンドに私は夢中でした。当時のアマチュア・ミュージックシーンは熱かった。毎月どこかしらのライブハウスではギグやコンテストが開催され、夏や年末のロックフェスティバルに顔を揃えるバンドの面々はしのぎをけずって競合していました。


そんななか、私たちM組にもつねにチケットに名を並べるライバルバンドがいました。とはいっても、知り合って意気投合した親しい交友の仲。ステージの上では競い合いつつ、日頃は女子同士で集まって音楽談義を交わすよき友人たちでした。
ところが数年を経て、相手バンドが一番年上のメンバーたちの大学卒業を機に解散の話に。当時、地元で一番大きかったレディースフェスティバルがラストと決まり、私たちが同じステージに立つのもこれが最後ということになりました。


そこで一つの大事が持ち上がりました。相手バンドから、最後のステージで演奏する曲目のために、私たちM組のキーボーディストにどうしても参加して欲しいというオファーがあったのです。たしかにそれまでにも、彼女たちのライブにM組のキーボーディストが応援で客演することはありました。しかし、今度のレディースフェスには私たちもエントリーされているのです。まさかではありましたが、キーボードのメンバーは悩んだ末、彼女たちとは最後になるからと相手バンドへの参加を決めました。


私たちM組はこの事態に動揺。しかし日程も迫り、キーボードなしで最高の演奏を果たすべく、入念な選曲でアレンジメントを変え、連夜スタジオリハーサルに取り組みました。メンバーが一人欠ける、そのことがメンバーの存在の大きさを知らしめると同時に、私たちに常ならぬ気迫の火をつけました。
フェスティバル当日、相手バンドとの少し気まずい空気のなか、ホールで他バンドの演奏を観ることもせず、楽屋でひたすらリハーサルのイメージを反復していました。そして出番の声掛け。いざとばかりに私たちは全身に火花をまとってステージへ。いつにない静かな自信と高揚に包まれながら、私たちは最高のステージを演奏し切ることが出来ました。音とリズムと気が完璧に一つになるエクスタシックな感覚を本当に覚えさせてくれた日でした。


そして結果は、準グランプリに相手バンド、グランプリに私たちM組、そして相手バンドに参加したメンバーは、ベスト・キーボーディスト賞を受賞。キーボードのメンバーも、成り行きに覚悟を決めて、相当の気概をもって取り組んだのでしょう。彼女が受賞でまずステージに登り、次いで相手バンドのメンバー、そして最後に私たちの受賞発表でみながステージに揃った時、喜びよりも決戦に張りつめた気が解かれて、これまでともに肩を並べてきた日々への思いが一気に溢れ、二つのバンドは互いに涙で抱き合っていました。


この異例のライバル決選で、私もメンバーもみんな、心も友情も技術的にもひとつ大きくブレイクスルーする体験を得ることが出来たのだと、今振り返って思います。この経験をくれたライバルバンドのメンバーたちにも感謝、今も色あせることのない鮮やかな思い出と楽曲を一緒に残してくれたM組のみんなにも一生感謝です!


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※今回の「いわし」ご投稿は7月9日(木)正午で終了とさせて頂きます。
※今回のピックアップ賞は7月10日(金)に「イエはてな」にて発表いたします。
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