「ずっと昔付き合っていた彼女に」by id:Catnip


私が高三、彼女が高二でした。受験を控えて精神的に弱っていた時に私を好きだと言ってくれた彼女は、迷える魂を救ってくれる天使のような存在でした。初めて好きだと言われた時、それまで灰色一色だった世界が一変した気がしました。
彼女は本当に私のために尽くしてくれました。時には受験のプレッシャーから辛く当たってしまうこともありました。でも、いつでもそんな私をふんわりと受け止めて、優しく癒してくれる人でした。どんなに八つ当たりをしても、最後には笑顔で「応援してるね」と言ってくれる、そんな素晴らしい彼女でした。
彼女はいつも私のことを第一に考えてくれていました。でも私にとっての第一は受験です。年の暮れが迫ってくる頃、街はクリスマスムードでいっぱいなのに、私達はもう会わなくなっていました。イブの日、ドアの前に置かれていたプレゼント。それが最後でした。
辛かった受験も終わり、やっと合格の栄冠を勝ち取って彼女に喜びを伝えようとした時には、もう連絡が取れなくなっていました。後で、ご家族の都合で引っ越したことを知らされました。
なぜそんな突然、と思って、ハッとしました。受験を理由に会わなくなってから今まで、ゆうに三ヶ月は経過しています。一つの季節を、私達は全く会わずに過ごしていたのでした。引っ越し話が持ち上がってくるには十分な期間です。
私は自分のことしか考えていませんでした。この間彼女はどんな思いで過ごしていたことでしょう。私の受験に差し障らないようにと、黙ってこの町を離れていったであろう彼女のことを思い、この時初めてこの恋愛で泣きました。
彼女の友だちに転居先を必死に聞き回りましたが、私の評判はすこぶる悪く、誰も教えてはくれませんでした。それほどに彼女は私とのことで悩み、苦しんでいたということです。私は激しく後悔しました。
やっと彼女の転居先が分かったのは、四月に入ってからでした。でも、それを教えてくれた人が、こう言ったのです。あの子新しい彼氏が出来そうだからそっとしてあげて、と。私はただうなずくしかありませんでした。
一言でいい、機会があったらごめんと伝えてくれないか、とお願いしてみましたが、今はあなたのことは言いたくない、十年くらいしてからでいい?と言われてしまいました。
自分本位で何の思いやりもなくただ悲しませることしかできなかった私から、いつも私のことだけを考えて尽くし続けてくれたあなたに。ごめんなさい。そしてどうか幸せに。


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