「結婚を申し込みに行った日」by id:atomatom


もう10年以上も前の話ですが、家内の実家に結婚を申し込みに行きました。
ぼくはどうも照れ臭いのが苦手で、家内と交際している間も、まあ電話を取り次いでもらうときにお母さんと2言3言、挨拶をしたことはありましたが、会うのはうまいこと避けていたわけです。
ですから結婚を申し込みに行くその当日まで、家内の両親と会ったことはなかったわけです。

いやあ、緊張しました。
家が近づいてくると、今日はもうやめて、また日を改めて、なんていう弱気な気持ちになったりもしたものです。
度胸を決めて家に入らせてもらうと、向こうも緊張しています。そりゃそうです。初対面の男が「お嬢さんをぼくにください」みたいなことを言いに来た、ということは家内からの事前の根回しというか、情報が届いていたわけですから。
普通に挨拶をして、食事時でもないのにビールとかつまみとか出してもらい、家内の妹とかも出てきて、それでも話はそれほど弾まず気まずい空気。
こうなったら、もう、早いとこ済ませてしまおうと、座布団から降りて、まあ実際になんと言ったか忘れましたけど「結婚させてください」とお願いしました。
一瞬の沈黙があって、まず家内のお母さんが涙を拭いて、それを見て家内もハンカチを出して。
お父さんは黙ったままで。
黙ったままなのは了承の合図だと勝手に解釈して、ぼくは逃げ出すように辞したのでした。
後から家内を通じてお父さんも認めてくれているとの話を聞き、ホッともしました。
結局、ぼくは泣きませんでしたが、あのときのお母さんと家内の涙は「うれし泣き」に数えてもいいんじゃないかなと思ってます。


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