イエ・ルポ 2

「たんぽぽのお花見」by id:CandyPot


子供の時に住んでいた町には、一面のたんぽぽ畑のような場所がありました。一年生くらいの時だったでしょうか。家族でそこにお弁当を持ってでかけて、ハイキングみたいなことをしたんです。たんぽぽがきれいで、お弁当がおいしくて、本当に楽しいひとときでした。
ところが翌年、私は春にひどい風邪を引いてしまいました。今年もたんぽぽ畑にお弁当を持って行こうと言われていた直前でしたので、それがだめになってしまって大ショックでした。風邪を引いて鼻が出るのに、さらに泣いて泣いて鼻水をたらして、もう大変な騒ぎだったと言います。
もちろんたんぽぽは急に咲き終わったりしませんから、風邪が治ってから、たんぽぽ畑に行くことはできました。でも父はどうしても予定が空けられなくて、私と母だけの小さなハイキングになりました。それがとても残念でした。それから一年、家族みんなでたんぽぽ畑に行ける日を、楽しみに楽しみに待ちました。そんなことがあってから、私はたんぽぽが特別大好きな花になりました。そして、私があまり楽しみにするものですから、わが家の恒例行事として、たんぽぽのお花見ハイキングが定着したんです。
引っ越して新しい町に来てからも、たんぽぽの咲いている場所を探して、春になると家族で出かけました。以前のような一面のたんぽぽ畑はありませんでしたが、それでもたんぽぽのお花見は続けました。私が高校生になってからその習慣は一時途絶えましたが、それが最近また復活しているんです。最近はずいぶんたんぽぽの数が減りました。でも、黄色と緑の春らしい姿を求めて、家族でお弁当を持って出かけます。今年もやります。父も母も楽しみにしてくれています。桜のお花見もいいですが、わが家では、たんぽぽのお花見も欠かせない季節の行事になっています。