イエ・ルポ

「過激な一夜を親子で共有、父とライブハウスへ」by id:momokuri3


父に、一晩付き合わないかと誘われました。父の古い友人たちが久し振りにライブをやるので一緒に行かないかと言うのです。まぁ、おっさんバンドだけど、それなりにいい音を出していた連中だから、きっと飽きることはないと思うよというので二つ返事でOKして、親子で某ライブハウスへ。父は、俺たちが若かったころは、こんなところ親に内緒でないと出入りできなかったよと笑っていました。
会場に入ると、オールスタンディングです。ドラムやベースのセッティングの音が響いて、それだけで血がたぎってくる感じがします。が、私以上に中年の父がノリノリでした。息子としては他人のふり、他人のふり(笑)。
いくつかのバンドが演奏を終え、ラストステージが父の古い友人とやらのバンドです。が、出てきたメンバーを見て驚きました。誰とは言いませんが、往年の名アルバムで勇名を馳せたかなりハイレベルなミュージシャンたちです。音楽は日本のロックの黄金時代を彷彿とさせるあくまでハードでストレートなもの。ハードロックですからギターがフィーチャーされたナンバーが続きますが、若いギタリストにはないブルージーなギターワークが泣かせます。私が聞き入っていると、少し離れた所で父が踊りまくっていました。他人のふり、他人のふり(笑)。
終わって外に出ると、まだライブの熱気が残りながら、同時に一気に襲ってくるけだるさ。祭りの後…という感じでしょうか。
父が歩道のガードレールに腰掛けました。そして、何か飲もうやと。目の前のコンビニでビールを買って、二人で路上で缶を傾けました。
父は、いつもライブの後、電車がなくなっちゃってさぁ、こうして夜通し友だちと過ごしていたもんだったよ、などと話していました。このまま朝までこうしていようかと言うと、そうもいかない、今は母さんがいるからねと。
終電で家に帰りましたが、普段は見られない、二十歳代に戻ったような父の姿を垣間見ました。そして私はその時息子ではなく、父の悪友の一人でした。あるいは若かったころの父の分身だったのかもしれません。過激な夜を、同じ心で共有できた真夏の一夜。いい思い出になりました。