「宵越しの不満は持たない、宵越しのケンカはしない」by id:tough


これがうち決め事です。私が小さかったころ、それこそまだおっぱいを飲んでいたころの話ですが、若かった両親は、けっこう頻繁にぶつかりあっていたとのことでした。


もちろんそんなに大きないさかいではありません。父の帰りが理由なく遅いとか、約束していた買い物をしてきてくれなかった、といった些細な出来事です。が、小さな言い争いも何度も繰り返されるとやがて習慣化してしまい、顔を合わせるごとに喧嘩腰、というようなことになってしまいます。


そんな危機感を感じた二人は、お互い大人なんだから譲り合おう、我慢し合おうと話し合ったそうです。しかしそれは失敗でした。我慢を溜めれば、かえって大きな衝突の火種を抱え込むことになってしまうのです。


そして起こった大喧嘩。あまりに派手に言い合いすぎて度を過ごしたと感じた二人は、お互いに休戦の切っ掛けを探したそうです。そこに折良く深夜0時を知らせる時計の音。もう昭和も後期でしたが、まだその当時のわが家では、ボーンボーンと鐘の音で時を知らせるクラシカルな柱時計が使われていたのです。


深夜0時の時計は12回も鐘を打ちます。それは注目して耳を傾けているとかなり長い時間です。そんなインターバルが二人の心を冷静にさせ、いい仲直りの切っ掛けを与えてくれたとのことでした。


それからの二人はどんなに言い争っていても、午前0時になったら感情をリセット。改めて話し合いが必要だと思ったら、翌日もう一度提案し直すという習慣が定着していったとのことでした。


というような話を、学生時代、父親と対立して感情的なこじれが深まっていた時、母親から聞かされました。
「ようするにもうそろそろ感情に走るのをやめて、冷静な議論をしろと?」
「うん、まぁそういうこと」
「わかったよ、努力してみる」
こうして私も、若い時代の父母が作ったルールの一員になっていきました。


感情を高ぶらせずに話し合うと、お互いの言いたいことがよく分かります。膠着していた話がどんどん進展して、簡単に解決が見られていきます。聖人君子ではないのですから、最初からそれは無理ですが、どんなに言い合ってもそれを翌日に持ち越さないという決まりは、言い争いというネガティブな出来事を、建設的な家庭作りの一環というポジティブな存在に変えてくれました。


今もたまには家族と言い合うことがあります。腹が立ってドアに八つ当たりしながらリビングを出て行くこともあります。でも深夜の12時を過ぎて日付が変わったら感情はリセット。翌朝は笑顔で「おはよう」。感情対立を引きずらないためには相手の非をなじらないことも大切ですから、一夜たてば誰も何も言いません。前夜の喧嘩が嘘のような朝食風景がおかしくて、思わず笑ってしまいます。


家族だからこそ本音がストレートに出てしまう。家族だからこそ感情がぶつかり合う。それは当たり前のこと。12時過ぎたら元に戻るシンデレラのような家族喧嘩なら、いくらやってもいいと思っています。


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