「無電源夕食」by id:momokuri3


最近のわが家の暮らしの習慣は「無電源夕食」。ようするに毎晩キャンドルナイトをやっているわけですが、これがなかなかすてきなのです。まず食事の時間はテレビを消しますから、その分語らいが進みます。


最近は世相が混沌としていますから、食事の時間にはちょっと不似合いな社会派の話題なども飛び出しますが、テレビのニュースショーでどっちつかずの意見を聞かされるより、生身の家族の考えを聞き、語り合う方が、しっかり社会を見る目が育つなぁと思います。テレビ関係の人には申し訳ありませんが、日本中がテレビを消してその時間を家族の語らいに変えたら、ちょっと日本が変わるかもしれないなんて、そんなことを思ったりするひとときです。


無電源ではBGMも鳴らせませんが、わが家には手回し蓄音機とコレクションのSPレコードという強い味方があります。これで往年のJazzの名盤を鳴らしたりするのがすてきなのですが、浪曲のSP盤がまとめて手に入ったので、最近はそんなのを聴くこともあります。森の石松の一席。「寿司食いねぇ、押し寿司ってぇのはうめぇもんだ」。ええーっ、石松が勧めていたのは江戸前寿司じゃなかったんだ!変な所に驚きつつ、日本文化に触れる一夜になったりもします。


こんな楽しい企画が自由自在なのもテレビのない夕食のいい所。流れてくる番組をそのまま受け入れて娯楽にするのとは違う、とてもクリエイティブなひとときが楽しめます。手回し蓄音機がないご家庭は、オーディオプレイヤーとアンプくらいは電気を使ってもいいのではないでしょうか。今宵はハワイアン、明日は南国奄美の民謡などと、趣向を凝らしたBGMで文化の香り高い夕食を楽しんでみてください。


電灯を必要としない夕食は場所を選びませんから、ベランダで食べたり庭で食べたりも思いのまま。最近は地震が恐いので、室内ではもっぱら太陽電池で充電したニッケル水素電池で灯すLEDランタンが夕食の灯り。本物のキャンドルを灯したい時は庭に出ます。先日は、庭で涼みながら夕食を食べていたら、ジーー、ジーーという音が聞こえてきました。「しーっ、静かに…聞こえた?」「聞こえたオケラの鳴き声だ」「まだいるのねぇ」。無電源夕食はキャンプの夜みたいですから、ちょっと自然界との距離も近くなります。


夕食を彩るキャンドル作りも楽しいものです。母は水に浮かべて火を灯すフローティングキャンドルがお気に入り。父はぶっとい巨大キャンドルを作り、合計何時間燃やし続けられるかと累計時間の記録をつけています。私は小型のカレー用ソースポットみたいな物を見つけてきて、それにロウを注ぎ入れて、アラジンと魔法のランプに出てくるランプのようなキャンドルを作ってみました。まだ当分屋外で夕食が楽しめる季節は続きますから、みんなの手作りキャンドルを順繰りに灯して楽しみます。


こんな風にテーマのある夕食が恒例になると、家に帰るのが楽しくなりますね。時々、今夜一杯やろうぜと誘ってくる友人を逆にわが家に誘ってくることもあります。父もそんな同僚を連れてくることがあります。そんな家族以外の顔ぶれが並ぶことが不自然ではないのも、わが家の習慣の特徴かもしれません。


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