「【空】と【風】を活かす盛夏の部屋作り」by id:TomCat


まず空。「そら」ではありません。空間のことです。


以前、外側に拡散していくようなレイアウトにすると涼しさを感じさせる部屋になる、逆に冬は中心に集束していくようなレイアウトにすると温かさを感じさせることが出来る、といった書き込みがあったと思いますが、やってみると本当にその通りなんですね。


拡散していくレイアウトとは難しい言い方ですが、とにかく二次元的にも三次元的にも空間を広くとった部屋作りと考えればいいでしょう。たとえば床の上に物を置かないこと。乱雑な物を片付けるのはもちろん、床に置かれて当たり前のマガジンラックなども、涼しくなるまでちょっとお休み。床を広々と空けることを第一とします。


テーブルも、もし一人暮らしか二人暮らしなら、思い切って小さな座卓にしてしまいましょう。これでさらに床が広くなりますし、天井との空間も大きく空いてスッキリします。


椅子の代わりはイ草の座布団がいいですね。イ草は肌触りがサラリとしているので、半ズボンやステテコ(笑)で過ごす夏には最適です。私は直径55cmくらいの丸座布団がお気に入り。四角い座布団も一辺が55cmくらいですから、丸ならその分面積が少なくなり、床に「空」が生まれます。


そして風。風通しを良くすることはもちろんですが、風を感じる部屋、風を視覚化する部屋を作りたいですよね。たとえば暖簾。風の通り道となる扉に暖簾を下げるんです。私の部屋の暖簾は、こちらでも書かせていただいたバングラデシュ製のジュートの布。
http://q.hatena.ne.jp/1306910489#a1075756


日にかざすと光が透けて見える軽やかな布で、わずかな風の動きにもひらりとそよぐんです。とっても涼しげですよ。


日本にも、麻で織られた同じような軽やかな布がありますね。あるいは葛布。葛の蔓から取った繊維で織られた物で、これがまた素敵な風合いなんです。古くは司馬遷史記にも夏の衣として登場した葛の布。日本でも古墳時代前期の古墳から、鏡に付着した葛布が出土しています。江戸時代までは公家や武士の装束として用いられていましたが、明治以降はその風合いを活かして輸出用の壁紙に加工されたりもしてきました。そんな布で作られた暖簾もまた軽やかに風にそよいで、部屋に涼感をもたらしてくれます。


ちなみに、葛布と書いて普通は「くずふ」と読みますが、「かっぷ」「くずぬの」などと読まれることもあります。色んな読み方で呼ばれるのは、それだけ長い歴史を経てきた証拠ですね。


あるいは、暖簾の大元は几帳であるとも言われていますから、薄絹で作られた暖簾なんていうのも素敵です。几帳とは、公家の邸宅に使われた間仕切りの一種のこと。こういう物です。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~masi-usi/sozai/kibutu/kityou1.html


やや蛇足が続きましたが、部屋を飾るアイテムにちょっとこういう蘊蓄も加味すると、そこからそれに相応しい室礼の連想が生まれたりして、さらに季節の部屋作りが楽しくなっていくと思うんです。


さてさて、風鈴もぜひ欲しいですね。窓辺で揺れる短冊は、見ているだけで涼しさを感じます。しかし今のご時世、風鈴の音が迷惑がられて隣人とのトラブルにもなる時代。そこでお勧めしたいのが、こんなCD。

風鈴 その壱~川~

風鈴 その壱~川~

風鈴 その弐~海~

風鈴 その弐~海~

風鈴 その参~蝉時雨~

風鈴 その参~蝉時雨~

風鈴はこの際、糸に付いている玉を取っちゃいましょう。鳴らない風鈴。サイレント・ウインドベルです。で、いい風だな、音を聞きたいなと思ったらCDをかける。これでたっぷり夏の風情が楽しめます。窓を空けている時はもちろん、閉め切っていてもOKなのですから、これは本当にお勧めですよ。


昔ながらの季節の風物詩が楽しめなくなっている現代生活だからこそ、現代らしい機器と知恵でそれを取り戻す。そんな工夫もまた楽しいではありませんか。


夏の風情を感じさせてくれるアイテムとして、団扇もさりげなく置いてみたいですね。夏はあちこちでプラスチックの骨の宣伝用団扇がもらえたりしますが、そういうのはバーベキューや花火などの屋外イベントで使うとして、盛夏の部屋作りの小道具としては、やはり素材からして涼しげな、竹製の骨の物が最適です。


竹骨と紙で作られる今の団扇の形が登場したのは室町時代末。江戸時代には一般大衆にも普及して、町民文化の中で広く用いられてきました。もちろんこの価値は現代にも生きていますよね。たとえばエアコンをつけていたとしても、手元に団扇が一本有ると、設定温度をかなり高くしていても涼しく過ごせます。


雰囲気は出るし、実用性もあるし、おまけに省エネだし。日本の夏にはぜひ伝統の自然素材で作られた団扇を。これ、お勧めです。


こうしてしつらえた夏の部屋に、今年の私は家庭菜園で収穫してきた夏野菜を篭に入れて飾っています。狭いながらも広々と空間を空けた室内に風を呼ぶ。そこにすくすくと育った野菜達が盛夏の生命力を輝かせる。うーん、我ながらいい部屋になりました。


皆さんも「空」と「風」を活かす夏真っ盛りの部屋作り、楽しんでみてください。


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