★★(二ツ星)

「アジアン素材で彩るスピーカーシステム」by id:TomCat


スピーカーボックスというと、だいたい前面は剥き出しか、黒のパンチングメタル、あるいは黒いネットというのが普通です。でも私は敢えてそのお約束を激しく破ってしまう物を作りたい。というわけで、最初に自作したギター用スピーカーは、前面に赤や黄色のパッチワークの布を貼った物でした。


再びそんな遊び心に火を点けてくれたのが、バングラデシュ製というジュートの布でした。その布は、生産者の素性もハッキリしていました。それはバングラデシュ独立直後に設立されたグループでした。


東西パキスタンの内戦は人々に酷い爪痕を残しました。そのことは、あのジョージ・ハリスンがシングル「バングラ・デシュ」を緊急リリースし、さらにバングラデシュ難民救済コンサートまで行っていたことからもうかがい知ることが出来ます。


そんな混乱期に、人々が既に身につけている伝統的手工業の技術で生きていけるようにと設立された生産グループが今も作り続けている布。それが、私の手にした布だったのです。バングラディシュの人々にとって、ジュートはとても身近な素材です。今もそれを活かした手作りの布が作られ、それを通じてバングラディシュの文化が世界に発信されていく。とても素晴らしいことだと思いました。


というわけで、その布をさっそく数枚購入してみることにしました。それは粗く織られた、日にかざすと光が透けて見える涼しげな布でした。幅は約30cmという細長い物です。3枚は横に並べて三尺幅のエスニック調暖簾に。これはこの布のお約束の使い方です。そして残った二枚を「トーンゾイレ」というスピーカーシステムの前面に張ることにしました。


トーンゾイレというのは、縦長のボックスにスピーカーユニットを何個も配置した、よくコンサートホールなどに見られるスピーカーシステムのことです。ボーカル用スピーカーに適した数々の特徴を持っていますので、私もそういうのを一対、自作していたのです。そのスピーカーボックスの前に布を持って行ってみると・・・・。おーーー。いい感じです。大きさもほぼ合っていました。何より、先に作っていた暖簾とベストマッチング。部屋に一体感が生まれます。


そのスピーカーボックスは、塗装も何もしていない合板剥き出しの姿でしたので、まず箱の表面をアジア調に飾ることにしました。使ったのは、まるで麻袋のような粗い織物に見える壁紙でした。ちょっと煤けた感じの色合いが何とも言えません。


それで箱の周囲をくるみ、大きさを合わせて作った木枠に例のジュートの布を張り、ボックスの前面に設置すると・・・・。出来ました!アジア風味のボーカル用スピーカー!これで歌っちゃうよ〜、アジアの歌!!


私は手に入れた布が縦長だったので、同じく縦長の一般的でないスピーカーボックスを飾るために応用しましたが、このやり方は、自作の様々なスピーカーボックスに適用できると思うのです。


イエはてなでも様々なスピーカーシステムの自作例が紹介されてきました。オーディオの自作の中で、最も大きく音に影響する部分は、やはりスピーカーです。一番楽しくやり甲斐のある分野と言えるでしょう。しかし自作の欠点は見栄えです。手作りの合板の箱はまるで工事現場のコンクリートを流し込む木枠のようで、いまいちインテリア性に欠けてしまいます。


それを、部屋の他の調度と統一感を持った外観に仕上げる。しかも市販品にはないオリジナル感溢れた作品に。そのための材料として、箱を飾る壁紙と、前面を飾る布の組み合わせは、とても効果的です。


たとえば和風の部屋なら、漆喰壁や珪藻土の壁のように見える壁紙で覆ったボックスの前面に、薄物の久留米絣なんて面白いと思いませんか。季節によって前面の布を模様替えするのも楽しそうですね。最近よく見かける天井吊り下げ型スピーカーも、部屋の雰囲気に合わせたファブリックパネルのような装いを持ったら楽しそうです。音だけでなく、そんな一風変わったデザインを目的にスピーカーシステムの自作を楽しむというのも、イエで楽しむ音楽を、一層文化の香り高い物にしてくれるのではないでしょうか。


»このいわしのツリーはコチラから


★★ ミシュランコメント

以前から私も思っていたのです。オーディオ機器やスピーカーなど、どうしても無機質な感じで、特にナチュラルな素材感でまとめたお部屋の中に溶け込まないんだよなぁって。そして、今回実作された「ジュートの布」によるスピーカーボックスの素敵なこと! 素材へのこだわりや詳しい装い方とともに、暖簾との組み合わせで、素材による空間の一体感も考えられるあたりは、さすがです! さらに、和の壁紙と「久留米絣」といった組み合わせや、季節やインテリアによって前面の布をファブリックパネルのように掛け替えできるようにするご提案まで! ほかでもない、情操豊かな音楽を楽しむためのものですから、ぜひ装いにもこだわりを。アジアン・インテリアをオーディオ設備にも反映させるという素晴らしいメッセージに、★★を贈ります!