大吟醸を飲む会」by id:momokuri3

「榮四郎」という名のお酒が手に入りました。親戚の伯父さんが、とにかくうまい酒なんだ、今度手に入れて送ってやるよと言ってくれていたお酒です。忘れた頃に届きました。


飲む前にどんなお酒かと調べてみると…。驚いたことに一升一万円の価格が付いていました。この価格、蔵元の自信のほどが十分にうかがえます。これはただものではなさそうです。


翌日職場でその話をしたら、早速飲ませろと言う人が寄ってきました。自分で買った物ならとてももったいなくて振る舞えませんが(ケチですねw)、すばらしい酒を体験させたいと贈ってくれた伯父の気持ちになると、私も仲間と一緒に味わいたくなってきました。「よし、メンバーは今ここにいる三人だけだ」。「これ以上増やすと飲める量が減るからな」。「極秘だな」。土曜の晩に決行することにしました。


さて、問題は肴です。これも私が用意しなければなりません。まだ封を切っていないお酒ですから、どんな肴が合うか見当も付きません。おそらく大吟醸なら特徴はフルーティー吟醸香。これを邪魔しない肴。ネットで調べると、味わいは淡麗辛口とのことです。私一人なら肴は不要といきたいところですが、来客を迎えますから、ここは白身魚の刺身でいってみることにしました。


さて何にしようと考えていたら、父が「俺も入れてくれるなら極上の平目を差し入れよう」とのこと。やってくる二人にもう一人増やしてもいいかと聞いたら「あのおやじさんなら大歓迎だ」と快い返事。職場からOKのメールを送ると、腕のいい板前さんに造ってもらうから楽しみにとのメールが返ってきました。


当日です。大吟醸は基本的に冷や。10℃くらいでいただきます。夏でしたので常温ではちょっとぬるい。一升瓶は冷やして待機です。友人たちがやってきました。寝間着持参で泊まる気満々です(笑)。満を持して平目の刺身を携えた父が登場。友人たちの推薦で、父が1本1万円なりの一升瓶の封を切ることになりました。


栓が抜かれ、各自の器に大吟醸が注がれました。おお、予想した通りの素晴らしい吟醸香です。吟醸香にも様々な特徴がありますが、これはたとえて言えばメロンのよう。口に含むと、すっきりとした爽やかな味わいです。「ひょ〜」「うめぇ」と声が上がりました。まずは肴なしでお酒のみを味わいました。


続いては刺身です。お、うまい!友人たちから、夏場なのによくこんないい平目があったねと声が上がりました。父は鼻が高そうでした。でも私は知っています。冬が旬の平目ですが、だからといって夏に味が落ちるわけではないのです。夏もうまいが、旬の時期に特別美味しくなる。それが平目なんですね。しかし、父の面目がありますから、ここは黙っておきましょう(笑)。


お酒はあまりグイグイやっているとすぐ無くなってしまいますから、ゆっくりと楽しみます。夏の夜でしたが、冷房はかけません。そんなことをしたら、せっかくの大吟醸のうまさが半減するからです。本当に良い酒は、自然の風の中で楽しむに限ります。暑い夜でしたが風は心地よく、窓辺の風鈴の音が爽やかでした。


刺身はたっぷり。いくら夏でもうまい平目とはいえ、これは上物です。刺身だけでも盛り上がれるうまさでした。一升空いた所でもう深夜。しかし修学旅行の夜と同じようなもので、一人世代の違うのが混ざっていますが、語らいは止まりません。そのまま夜が更けるのも忘れて、野郎トークが続きました。結局その晩は全員雑魚寝。友人たちは持参の寝間着に着替えることなく遅い朝を迎えてしまいました。四人で一升なら一人二合半。そんなに度を過ごす量ではありませんが、やはり質の高いお酒と雰囲気が、アルコール分以上に場を楽しませてくれたようです。


この時飲んだ「榮四郎」は、福島県の栄川酒造という所が作っているお酒です。福島。心配になって、今ネットで検索して調べてみました。そうしたら、


お知らせ
東日本大震災」におきまして、被害にあわれた皆様に心よりお見舞い申し上げます。
当蔵は、大きな被害もなく、従業員一同一日も早い復興活動に努めておりますので、今後ともよろしくお願い致します。取り急ぎご報告申し上げます。
皆様のご無事を心よりお祈り申し上げます。
平成23年3月14日
榮川酒造(株) 代表取締役社長
宮森 優治
http://www.eisen.jp/top.html


とのことで、ホッとしました。皆さんも東日本のお酒を是非どうぞ。自粛などせず飲んで、被災県の経済を活性化させていきましょう。またそのうち、東日本の名酒を味わう会を催したいと考えています。



»このいわしのツリーはコチラから