「可愛いお客様がやってきた」by id:SweetJelly


以前も似たような体験が書き込まれていたと記憶していますが、それが我が家にも起こりました。わが家の庭にモップの先みたいなものがやってきて、ゴソゴソ何かをしていたのです。え?何?犬?。良く見ると、それはとてもよく手入れされたワンちゃんでした。でも、毛の色がややくすんで、しばらく放浪していた感じです。


慌てて家族を呼ぶと、母がやってきました。「あらー、こんなワンちゃんが捨てられるわけ無いから、飼い主さん探してるわねぇ」とのことで、捕まえることにしました。「早く、お母さん」「何言ってるのよ、私は犬は苦手なのよ」「ええっ、私が捕まえるの?」。


小さなワンちゃんでしたが、私は慣れていないのでこわごわです。向こうもそんなこちらの気配を察したのか、緊張しているようでした。いけないいけない。子供と接する時のことを思い出して、しゃがんでみました。出来るだけワンちゃんの目線に合わせてみようと思ったのです。それが良かったのか、ワンちゃんは警戒を解いてくれたようでした。が、手を伸ばそうとするとまた警戒します。しばらく膠着状態が続きましたが、そのうち心を許してくれたのか、く〜んと鳴いてくれました。おいでと声を掛けると、来てくれました。ワンちゃんの方から!!これでお招き完了です。玄関に入れて、扉を閉めました。


次は飼い主さん探しです。保健所と警察署に電話をしてみましたが、どちらも今のところ該当する届け出はないとのことで、しばらくは我が家で面倒を見なくてはならない雲行きになってきました。犬のことはよく分からないので、詳しい友達に電話でSOS。さっそくワンちゃんが喜びそうなフード持参で駆け付けてくれました。


犬の種類はスコティッシュ・テリア。普通は黒っぽい毛色が多いとのことでしたが、この子は明るい小麦色です。ウィートンというそうです。「スコティッシュ・テリアのウィートンは数が少ないし、この子みたいな白っぽいウィートンはさらに数が少ないから、これは飼い主さん探しのいい情報になるよ」とのこと。うわぁ博識です!助かります!やはり持つべきは友達です。


ワンちゃんは尻尾をプリプリ振りながら甘えてくれました。友達はそれを見て、よく短時間でこんなに懐いたねと驚いていました。テリアは一般に警戒心が強く、知能も高いので、とても気難しいのだそうです。「恐い思いをしてたんだねぇ、そこから助け出してくれたことに恩義を感じて、あなたに従う気になったんだよきっと」とのことでした。


独りぼっちだった寂しさを早く癒してあげるためにも、お食事タイムにすることにしました。友達が持ってきてくれたフードをお皿にあけると…。あら、いい子で待てをしています。友達が食べていいよの合図をすると、喜んで食べ始めました。「よく躾られてるね。犬を見ると飼い主さんが分かるよ。躾は愛情の一環だから、この飼い主さん、きっと今頃すごく心配してるね」とのこと。ごはんを食べて、お水も飲んで、ワンちゃんはご機嫌です。


食べてる時のワンちゃんって可愛いですね。私はそんな可愛い姿をもっと見たくて、おやつを買ってあげたくなりました。どんなおやつがいいのかなと相談すると、友達は、体調や体質が分からないうちは基本的なフードだけにしておいた方がいいとの意見です。「だめなの?」「うん。もしかすると体質的に合わない物があるかもしれないから。このフードも念のためアレルギーが出にくいのを持ってきてみたんだよ」とのことです。これは気が付きませんでした。ワンちゃんのおもてなしも、ただ喜ぶ物を出せばいいというわけにはいかないようです。


でも勉強になりました。ペットといえども、お招きから食事まで、人に対する配慮と同じような気配りが必要なんですね。特に初対面の時の心の通わせ方や、食事内容の配慮などは、人間の子供に対する時とかなり似ていると思いました。遊び方も甘え方も、表現は動物独特ですが、心は私達と変わりません。


結局、このワンちゃんは三日ほど我が家に滞在しました。三日目に飼い主さんと連絡がつき、無事元のお家に帰ることが出来ました。飼い主さんが迎えに来ると、ワンちゃんは大喜び。帰り際、ワンちゃんは私の方をじーっと見つめてくれました。門の所でお見送りです。笑顔でバイバイ。何とか玄関に入って扉を閉めるまでは、涙を流さずにいられました。犬は三日飼ったら恩を忘れないと言いますが、私の方がワンちゃんと過ごした三日間を忘れられなくなりました。


でも、飼い主さんとはその後もメールでやりとりをしていて、ワンちゃんの写真をたくさん送ってくれます。隣町のワンちゃんだったのであまり頻繁には会えませんが、時々一緒にお散歩に歩かせてもらったりもしています。また我が家にお招きしたいなぁ。その時はどんな風におもてなししましょうか。飼い主さんも交えた会食プランを想像すると、思わず顔がほころんでしまいます。


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