「目で、舌で、ナズナを愛でる」by id:Catnip


撫でたいほど愛らしい花だから「撫菜(なでな)」。茎の先端の成長た所に次々と花を咲かせていく無限花序ですから、いつも花を咲かせているように見えますが、夏になるといつの間にか姿を消しています。だから「夏無(なつな)」。名前の由来には色々な説がありますが、とにかく可愛い春の花です。


荒れ地に強い草で、他の草が弱々しい場所でも元気に生えていますから、探しやすいですよね。市街地の道端などでもきっと見つかります。見つけたら、花をじーっと見てください。小さな花ですが、ちゃんとアブラナ科の特徴である4枚の花びらです。


子供の頃はこのナズナ、ずいぶん乱獲してしまいました。種の部分をちょっと下に引いて皮一枚でつながっている状態にして振ると、シャラシャラ音がするでしょう。それが面白くて、両手一杯に摘んで思い切り振り回しては遊んでいたんです。


繁殖力は強いですから、全国的に見れば絶滅することはないでしょう。でも私のマチでは、ずいぶん少なくなってしまいました。だから今は採らずに、そっと眺めて愛でるだけにしています。


でも、私はこれを栽培もしているんですよ。良く成熟した種(三味線のバチ型のサヤ?の中に細かい種が入っています)をちょっともらってきて播いておけば、秋に芽を出します。たまに来春まで芽を出さない種もあり、播けば数日で芽を出す草花に比べてずいぶん気が長い話ですが、そのへんが野草ですね。


栽培する目的は食用です。愛でるといいながら食べちゃうんですが、そこは大切に子孫を残していくのでご勘弁。ナズナ春の七草で知られるように食べられる野草ですし、アブラナ科植物の多くにみられる化学的抗がん作用を持つ物質であるイソチオシアネート類(カラシ油もこの一種)を立派に含んでいます。つまり体にいい野草なんですね。自分で育てれば安心して食べられますから、ちょっと多めに育てています。


土はごく適当でOK。上に書いたように荒れ地でも育つ草ですから、肥料もほとんど要りません。ただし、毎年こぼれた種で増えていきますから、庭に植えるとそのうちペンペン草屋敷になってしまいます。ですから、育てるのはプランターがお勧め。真っ直ぐな根が長く伸びる草ですから、土の深さが30cm くらいとれる大型の物で育ててください。私は家庭菜園を耕作していますので、一区画がナズナ畑になっています。


七草粥などにして食べるのはまだ花茎が立っていない冬のロゼット状の葉の部分ですが、三月くらいまでは食用期です。家庭菜園としては冬場の貴重な緑ですね。食べ方は、まず、おひたし。これは基本ですね。胡麻和えも美味しく栄養満点。茹で方はサッと。すぐに冷たい水にとって色を良くしてから使います。野草ですから多少アクっぽさがあります。それが苦手な人は、茹でた後に水を換えながら晒すことで抜いてください。茹で時間を長くして食べやすくしようと思うと、くたくたになってしまい美味しくありません。


天ぷらもいけます。最近のわが家的ヒットは「ナズナとキノコのマヨネーズ焼き」。こちらのページを参考に作りました。美味しいですよ。
http://www.j-sanchoku.net/index.php?f=&ci=12449&i=12966


こうして食用として楽しめる時期を終えると、ナズナは花茎を伸ばし、白い可愛い花を咲かせていくことになります。それを愛でているうちに実りを迎え、種を土にふりまいて、次世代に命をつないで枯れていきます。


江戸時代の本草学者、貝原益軒は、「大和本草」で北宋の詩人・蘇東坡の言葉を引きながら「天生此物為幽人山居之為」とナズナを紹介しています。天が山に暮らす仙人みたいな人のために生やしてくれる草、それがナズナなんですね。しかも、とても美味しいと紹介されています。味を愛で、花を愛でる可愛いナズナ。皆さんの足元にもきっと見つかります。


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