★★★(三ツ星)

「子供の耳にやさしいオーディオインテリア」by id:momokuri3


インテリアを五感でとらえるものと考えたら、音で部屋を彩るオーディオも立派なインテリアです。視覚的なデザインが優れているとか豪華であるとかいったことではありません。部屋の目的に似合う音、そこにいる人に心地よい音を届けるという「音のインテリア性」。私はこれがもっと求められていいと思うんです。そういうアプローチで、子供のためのオーディオについて、ちょっと考えてみたいと思います。


子供の耳に優しい音とは、どんな音でしょう。私はおそらく、自然界で聞こえてくるような音。たとえば森で聞く小鳥のさえずりとか、野原で聞く秋の虫の声のような音。楽器の音色で言えば、生のバイオリンとかフルートなどのアコースティックな音ではないかと思います。


また、味覚を育てるためにはまず素材の味を教えることが大切といわれますが、音に対する感覚を育てるためにも、人工的に加工されすぎていないナチュラルな音に接していくことが大切ではないでしょうか。


そんな音を再生してくれるスピーカーシステムを目指して作ってみたのが「平面バッフル」でした。結果は大成功。拍子抜けするくらい素直すぎる音でしたが、音質的に何かが足りないと思う部分はありません。むしろ柔らかく温かみのあるクリアーな音にはすばらしいものがありました。迫力はありませんが、逆にドンシャリ的なスピーカーでは賑やかさに埋もれてしまうような繊細な音が表に出てきて、かえって豊かな響きです。音を通じて情操を育んでいきたい子供たちの耳には、きっと最適な「音のインテリア」。そんな音のするスピーカーシステムが出来上がりました。


それでは、その完成図をご覧に入れましょう。本当は写真をお見せしたいのですが、「どうだ、いい音だろう」と友だちに聞かせたら、どうしても欲しいとせがまれて、今はもう手元にないんです。もちろん友だちが欲しがった理由は、当時2歳だった愛娘ちゃんに聞かせる音楽を鳴らすため。そのくらい評判が良かったスピーカーなんですよ。



拙いイメージ図で恐縮ですが、構造はこれでおわかりいただけると思います。ご覧のように「スピーカーボックス」と言えるような箱の構造は持っていませんが、スピーカーユニットの中には、こうした構造の方がよく鳴ってくれる物もあるんです。現代的なスピーカーの多くは、箱の中の空気が一種のサスペンションとして動作することを前提に設計されていますが、古いタイプのスピーカーの多くは、空気の圧力に邪魔されない自由で自然な振動が確保される時に、一番素直な音を奏でてくれるんですね。ただ、むき出しのユニットのままで鳴らすと、前から出てくる音と後ろから出てくる音が干渉し合ってしまいますから、それを防ぐ意味で、こうした板に取り付けて、後ろから出てくる音を穏やかに遮ってやるわけです。


素材は21mm厚の普通の合板。それを縦900mm、横700mmに切り、中心からちょっとずらしてスピーカーユニットを取り付ける丸穴を空け、板を立てかける脚を付けただけ。なお、スピーカーユニット取付穴の直径は145mm、穴の中心は、左(右チャンネル用は右)から300mm、上から 400mmの位置としています。立てかける脚は板の裏に、それぞれ左右100mmほど内側の位置に取り付けました。板の傾斜は80度として、前に倒れてくるのを防いでいます。


使用したスピーカーユニットは、ダイトーボイスという会社のDS-16Fという型番の物。BOSE社などにも同じ型番のスピーカーシステムがありますが、こちらはオーディオ好きの間では通称「無印」と呼ばれている16cmフルレンジスピーカーユニットです。無印と呼ばれるだけあって価格は安く、ステレオ用に2本買っても4000円でお釣りが来ます。通販でも買えますので、メーカー名と型番で検索してみてください。


これは長く名器と呼ばれ続けたダイヤトーンP-610とよく似た特性を持ったスピーカーで、現代的な設計の箱には似合いませんが、こうして平面バッフルなどとして仕上げると、水を得た魚のように生き生きとした音を出してくれるんです。


重い振動系をパワーで駆動する現代的なスピーカーと違い、軽量のコーン紙を小径のボイスコイルで軽やかに振動させるタイプですので、小音量で鳴らしても音が曇ることがありません。指向性も良く、1つのユニットで全ての音域をカバーしますから、音域ごとにスピーカーを分けるマルチウエイシステムにありがちな位相の暴れもほとんどありません。


大人には物足りない音かもしれませんが、子供の耳には本当にやさしい音を届けてくれます。聴き疲れしませんから、子供に聞かせたい音楽や読み聞かせCDなどを流しっぱなしにしておいても大丈夫ですし、お腹の子の胎教や赤ちゃんのためにごく小音量で流しておくBGMなどにも適していると思います。そういう、やさしいやさしい音がします。


実際に子供用に作る場合は、合板むき出しでは角がささくれ立ったりして危険ですから、壁紙などで板をくるんでしまいましょう。子供部屋用の壁紙にはかわいいものが色々ありますから、子供に選んでもらうといいですね。また、スピーカーユニットがむき出しだと、つついて破ってしまうおそれがありますから、スピーカーの前面には何か適当なプロテクターをかぶせてください。重量が軽く倒れやすいので、その点も何らかの対策を施してくださいね。


以上、ちょっとイエはてなには異色の内容になってしまったかもしれませんが、「音で部屋を彩るキッズインテリア」として、こんな変わり種スピーカーをご紹介してみました。なお、上でご紹介した平面バッフルの製作例は、三菱電機ダイヤトーン P-610」の取扱説明書に記されていた物に準じています。音楽好きの皆さん、そして子供たちのご参考になれば幸いです。

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★★★ ミシュランコメント

「音で部屋を彩るオーディオも立派なインテリア」というメッセージにもハッとしましたが、「子供の耳には本当にやさしい音」という着眼に、なんだか音のようにあふれてくるやさしさを感じました。実際にどんな音なのか聴いてみたいですw 描いてくださった図解をみると、木の板の面が大きいので、ご提案のように壁紙でくるんで美しいでしょうし、たとえば色を塗ってみるだけでモノとしてもちょっと風変わりなインテリアになりそう。〈イエはてな〉の書き込みのたびによく試作してくださっていますが、今回もこんなスピーカーを作ってしまわれるとはオドロキです。オーディオの知識と、子どもへのやさしさと、インテリアセンスの3つが揃ってハートに響く素晴らしいご提案に、キラキラの★★★を贈呈します!