★★★(三ツ星)

「漆喰アートを楽しむ」by id:C2H5OH


今までも何度かイエはてなの語らいに登場してきた漆喰も、素晴らしい天然素材ですね。昔ながらの漆喰は、石灰岩に塩を加えながら焼いていく「塩焼き灰」が主原料。これに「つた」(あるいは「すさ」)と呼ぶ麻などの繊維と、塗りやすくするためのフノリ等を加えた物でした。現代の調合漆喰には「つた」に化学繊維が使われたり、フノリの代わりに合成樹脂が使われたりしている物もありますが、今でも100%天然素材の漆喰はありますし、自分で調合することも出来ます。


私も漆喰塗りに挑戦したくなりましたが、イエの壁に塗る度胸はありませんでしたので、ちょっとしたアートパネル作りを楽しんでみることにしました。パネルの材料は、枠になる木、ベニヤ板、そして石膏ボードです。


まず木で枠を組み、そこにベニヤ板を打ち付けました。写真パネルなどは「日」の形に木枠を組んでベニヤ板を張り、枠のないベニヤ板側を表として使いますが、この用途では、木枠を「ロ」の字型に組んでベニヤ板を張り、枠のある側を表として使っていきました。パネルを壁に見立てると、木枠が柱や長押などに相当することになります。さらに枠の大きさぴったりの石膏ボードをはめ込んで接着。この石膏ボードは漆喰の下地代わりです。


ここに、曲がりの面白い「Y」字型の太い木の枝を貼り付けました。曲がりの面白い木の枝はどの方向から見ても湾曲していて、そのままでは石膏ボードの平面に密着しませんが、要所要所を削ったり、軽く切れ込みを入れて折り取らない程度に軽く折ったりしながら、うまくボード面に沿うように加工していきました。


各部分の貼り付けには、はみ出しても漆喰の着きが悪くならないと思われる「続飯(そくい)」を用いました。続飯(そくい)とはご飯粒を練った物で、昔から建具製作などの接着剤として使われてきた物です。枝と石膏ボードの接着は、所々浮いて隙間が出来ていますので、続飯に収縮防止剤としてオガクズを混ぜた物で貼り付けていきました。天然のパテ接着剤です。


あとは続飯が乾いて十分に硬化するのを待って、石膏ボードの上に漆喰を塗り込んでいきました。続飯は水溶性ですから、もしかして漆喰の水分で溶けてばらばらになるかもと思ったのですが、この時は特にそういう問題は発生しませんでした。仕事の関係で漆喰塗りを翌週に回したのが良かったのかもしれません。良く練った続飯は、ご飯粒とは思えないほどの強固な接着剤です。天然素材って素晴らしいですね。


漆喰は素人が塗るとデコボコになりますが、あえてそれがヘタウマの味わいになるように大胆に塗り込んでいきました。やがて水分が抜けていくと、漆喰は二酸化炭素を吸収しながら固まっていきます。乾燥後の肉やせを心配しましたが、いわゆる気硬性の素材だからということなのでしょうか、枠や枝との間に目立つ隙間が空くことはありませんでした。


これで、木と漆喰による昔の民家の壁を切り取ったような、漆喰アートパネルが完成しました。漆喰にはホルムアルデヒドなどを吸着分解する機能があると言われています。このパネルは小さな物ですが、それでもごくささやかには、そんな働きもしてくれていることでしょう。大きな作品を仕上げることが出来れば、「シックハウス防止アート」などと呼べる機能性インテリアも作れるかもしれません。


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★★★ ミシュランコメント

すべてが天然素材のアートパネル、知識も創意も結集して作られた見事な出来栄えが目に浮かびます! 木の枝の何ともいえない造形の妙と、漆喰の白く美しい肌は、素朴でありながらモダンな味わいも醸し出しているのではないでしょうか。このデザイン性にまず驚き、さらに天然接着剤まで手作り、粘着強度や細かな仕上がりまで想像しながらの手仕事は、ほとんど職人の域だと感銘を受けました。さらにシックハウスを防止する「機能性インテリア」というところまで想定され、まるでプロフェッショナルの仕事。とうとうここまでのアイデアと実践力が〈イエはてな〉から出た!というよろこびもいっぱいに、とびきり輝く★★★を贈呈します!