「それぞれの郷土の誇る文化遺産、祭囃子を習ってみよう」by id:TomCat


今まで何度かに渡って日本の伝統音楽の楽しみについて書いてきましたが、私達の身近にある馴染み深い伝統音楽のひとつに「祭囃子」がありますね。皆さんがお住まいのマチにも、きっとそれぞれの地域に伝えられてきたお囃子を受け継ぐ保存会などがあると思うんです。その多くが新学期になると、子供祭囃子クラブみたいな会の募集を始めます。これにぜひ注目してみませんか。


祭囃子の歴史は地域により様々ですが、今のようなお囃子の形が出来上がってきたのは、おおむね室町時代ではないかと言われています。つまり、能楽(当時の呼び方は猿楽)が発達してきた時代とほぼ同じですね。


さて、ここでちょっと日本の伝統音楽の歩みを振り返ってみることにしましょう。日本も歴史の長い国ですから、遠く縄文あるいはそれ以前から伝えられてきた音楽があるわけですが、5世紀前後、つまり古墳時代の前期から中期にさしかかるあたりですね。そのころから大陸を渡って、様々な音楽や舞踊が伝わるようになってきました。


その後、大宝令(701年)によって雅楽寮が設立され、平安時代の国風文化の流れを経ていく中で、それらの幅広い文化が古来からの伝統と融合して日本独特の音楽として発展。それが現代の雅楽能楽、その他様々な伝統芸能のモトになってきたわけですが、その中の一つに神楽(かぐら)がありました。


庶民が伝え守ってきた神楽を里神楽(郷神楽)などと呼んだりしますが、これをベースに発展してきたのが祭囃子。おそらく各地の祭囃子の大元は、そんな感じではないかと思うんです。


江戸時代になると、さらにここに「和歌囃子」が加わります。紀州には、大漁の時に舟板を打ち鳴らす「和歌の浦囃子」というのがあります。紀州の殿様とともに江戸にもたらされたこのお囃子に、鎮守香取大明神(現在の葛飾東金町六丁目・葛西神社)の神主であった能勢環(のせたまき)が同神社に伝えられていた里神楽を融合、「和歌囃子」というのを作り出して人々に伝えると、その調子の良さが大いに評判となって、江戸の祭囃子の元になっていったのです。威勢のいい江戸風の祭囃子のリズムは、なんと紀州漁民の大漁を祝う喜びの音からもたらされてきたんですね。


そのほか、各地に伝わる祭囃子には、それぞれの地域独特の歴史の積み重ねがあります。そうした郷土の歴史に触れつつ、日本の伝統音楽の素養も身に付くという大変お得な会が、各地の祭囃子保存会だったり子供祭囃子クラブだったりするわけです。これを見逃す手はありません。


募集は、大々的にポスターを張り出す所もあれば、関係者の口コミでしか広まってこない所まで様々ですが、区市町村の広報紙などに募集要項が掲載されることが多いようです。また、地域の公民館や児童館などで案内されることもあります。地元の自治会・町内会などと密接な関連を持って運営されている所も多いですから、そういうところのお知らせも要チェックですね。学年度末を迎えるこれから4月一杯くらいまでの間が新規募集期間というところが多いですから、今から注意して探してみましょう。


祭囃子の保存・継承は大人の役目でもありますから、お父さんお母さんが一緒に加わって活動できるのもいいところ。一緒に楽器を持って練習するもよし、保存会などの運営面だけに加わっていくのもいいでしょう。


演奏者として参加していく場合、大人の練習は子供達とは別スケジュールになっていることが多いと思いますが、熟練してくればゆくゆくは指導者として子供の練習に加わっていくことも出来るようになります。また、運営面で参加していく場合も、お祭りのお囃子スタッフとして、ねじり鉢巻きで子供達と一緒に張り切っていけたら楽しいですね。


そのほか、地域の様々なイベントに参加したり、市民文化祭などの舞台で成果を披露したりと、お囃子の活躍の場は盛りだくさんです。お囃子がそこまで盛り上がっていないという地域もあるかと思いますが、それならなおさら、これから関わっていく皆さんが主人公ということですから、夢が大きく広がりますね。


祭囃子を入り口に、郷土史や郷土文化の研究、様々な邦楽を演奏していく楽しみ、そして地域興し活動など多彩な生き甲斐・やり甲斐にも発展していけますから、子供の習い事としてだけでなく、大人のライフワークとしても、きっと楽しいですよ。


私は横笛が好きで、自作の横笛を何本も作っています。近所の子供は、お父さんと一緒に古タイヤを利用した太鼓練習台を作って、それを叩いて一所懸命練習しています。そんな楽しみもたくさん待っている祭囃子。関わってみると、ほんと、面白いですよ!!


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