★★★(三ツ星)
知り合いのイエなのですが、部屋の中にとても格好良くツタを這わせている人がいます。今回のテーマに良さそうなので、ちょっと話を聞いてきました。
今までにもツタを使った室内装飾は見たことがありますが、それはフェイクだったり、本物のツタを使っている場合も一時的なディスプレイだと思っていました。しかしそのイエでは、四季を通じて壁一面にツタを這わせているんです。
もちろん壁一面にといっても、びっしりと壁に密着させているわけではありません。あくまでフワッと。時々カゴなどに吊ってツルを垂れ下がらせている装飾を見かけますが、ちょうどそれが壁一面に展開されている感じなのです。
もうちょっと具体的に説明すると、ツタが展開されている壁面は違い棚になっています。ツタの根元は棚の上段の端に置かれた鉢に植わっていて、そこから垂れ下がるように、ツルが壁面を飾っているのです。ツルは適度な間隔を与えられながら、棚と棚の間を泳ぐように伸びています。壁に密着したツタと違って立体感のあるフォルム。また密生しているわけでもないので、ツタの存在が部屋の空間を圧迫することもありません。とてもセンスのよい這わせ方です。
おまけに夜は、棚に置かれたいくつかの小さなLEDスタンドを、ツタの葉の向こうで間接照明のように点灯させることも出来ます。これはもう、違い棚のある壁面という空間全体に展開される一種のアート。インスタレーションと言えるでしょう。
使われているツタはいわゆるアイビー、日本名はセイヨウキヅタです。手入れが大変でしょうと聞いてみたら、アイビーが伸びる時期は春と秋だけなので、その時期に伸びすぎたツルを整理してやる程度とのこと。数年に一度は根を整理して植え替えてやる必要がありそうだけど、それはまだやっていないとのことでした。
もちろんこれは日本に自生するキヅタと同属で、キヅタが別名フユヅタとも呼ばれる通り、アイビーも落葉することのない常緑性の植物ですから、秋に葉が落ちて部屋が大騒ぎ、ということもありません。
アイビーは比較的乾燥に強く、半日陰でも大丈夫なので、エアコンの風などが直接当たる場所でなければ、けっこう自由にレイアウト出来るとのことでした。
ツルが壁に密着する可能性については、アイビーの性質として、下から上に這い登る以外は密着するための不定根を出さないとのことでした。言われてみると、たしかにコンクリートの壁から垂れ下がって伸びているようなアイビーは、壁面に密着していないケースが多いような気がします。また、不定根が形成されるのは通常はツルの先端のみなので、既に育ってしまったツルが棚板などにへばりつくこともないと言っていました。
となれば、これは鉢を這い出して大きく広がってはいても、基本的には普通の鉢植えと同じです。どこにも密着していませんし、豆のツルのように巻き付いたりもしませんから、部屋を傷めることも無さそうですし、撤去しようと思えばすぐにどけることも可能です。
このように、アイビーは意外に簡単に部屋に導入できる植物であることが分かりました。私もぜひやってみたいと思い、春になったら挿し穂を分けてくださいとお願いしてきました。アイビーの挿し木の時期は、桜も散って春本番を迎えたあたりから秋口くらいまで。かなり適当に挿しておいても発根するので、伸びすぎたツルを切って挿しておけばどんどん増やせるとのことでした。
部屋の中にツタ。これはとてもお洒落です。放置してしまうと部屋がツタに占領されてしまうこともありそうですが、適度に手入れしていれば、すてきな部屋のお友だちになってくれそうです。ツタ初心者の私は、まずは小さなカゴに植えたアイビーを窓辺にささやかに垂らしてみることから。春になったら準備を始めてみたいと思っています。