「親子で古い日本の映画を見る」by id:watena


古い映画、とりわけ日本の古い映画は、意識して見ようとしないとなかなか見る機会がありません。でも、いい映画がけっこうあると思うんです。


大忍術映画 ワタリ【劇場版】 [DVD]

大忍術映画 ワタリ【劇場版】 [DVD]


まず特撮系忍者映画から。時は戦国時代。忍者というと甲賀と伊賀が有名ですが、こちらは伊賀の忍者少年が主人公です。伊賀の里では、百地三太夫率いる百池党と、藤村長門率いる藤林組とが覇を競い合っていました。ここにやってきた少年ワタリ。彼は同じ忍者少年のカズラと知り合い友情を結びます。が、カズラの姉でありやはり忍者であったツユキは五月雨城攻略の任務に失敗して命を落としてしまいます。姉の無念を晴らそうと五月雨城に忍び込んだカズラとワタリが見たものは…。驚くべき謀略と大人の汚れた権力構造に立ち向かう、熱い少年達のドラマが展開されていきます。
原作は「週刊少年マガジン」(講談社)で1965年(昭和40年)から1967年(昭和42年)にかけて連載された白土三平作「ワタリ」。まだモノクロ映画も珍しくなかった時代に、カラー、シネスコ、アニメーションとの合成による特殊効果といった凝った製作がなされています。
おそらく今のお父さんお母さんにとっても前時代の作品。今の技術で処理された映像を見慣れている人の目には、最初は陳腐な映画と映るかもしれませんが、作品の世界に引き込まれていくと、当時の子供達と同じ目の輝きで見られると思います。
1966年、東映。監督・船床定男。


大怪獣ガメラ [DVD]

大怪獣ガメラ [DVD]


こちらも特撮系。ガメラシリーズの記念すべき第一作です。怪獣映画では東宝製作の「ゴジラ」が先行していますが、ガメラの特徴は「子供と仲良し」というところ。動き回るだけでも大災害に匹敵する被害を及ぼす怪獣ですが、絶対的な悪ではないんですね。
ガメライヌイットの伝説に伝えられる巨大生物(映画内の設定)。ある時、北極海上空で国籍不明機が発見され、撃墜されます。ところがこの飛行機に搭載されていたのは、なんと原爆。まがまがしいキノコ雲が北極圏を覆います。このショックで目を覚ましたのが、地下深く眠り続けていたガメラ。やがてガメラは日本の北端、北海道の岬にやってきます。灯台を破壊するガメラ。しかし逃げ遅れた灯台守の子・俊夫を見つけて、ガメラは救けようとする行動を取ります。
その後ガメラは首都東京にまでやってきて猛威を振るいますが、数万ボルトの高電圧にも、科学の粋を集めた冷凍作戦にもビクともしないガメラ。ついに全世界の科学者が東京に結集して編み出した最終作戦、Zプランが発動されます。はたしてZプランとは何か。人々の運命は、そして本当は心優しい生き物・ガメラの運命は。さらにガメラを思う俊夫少年の胸中やいかに。
ガメラシリーズは今でも続いていますが、見るならまずこの第一作から。モノクロ作品ですが、見応えがあります。
1965年、大映。監督・湯浅憲明


山びこ学校 [DVD]

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続いては、がらりと内容の違うこちらの映画。舞台は山形県の寒村に実在した中学校。時代背景は、原作の書籍が1951年(昭和26年)刊行ですから、まだ戦争の傷跡が色濃く残る時代と考えていいでしょう。
既に戦後ですから中学は義務教育ですが、この村では生きるために大人も子供も必死になって働かねばならず、そのため学校の出席率はかなり低いものになっていました。教師は、そんな境遇の生徒達を少しでも高めてやろうと懸命に取り組み、それに応えて生徒達も少しずつ心を開いていきます。
エピソードには、勉学以外の出来事が多く登場します。たとえば貧しさゆえに修学旅行に行けない生徒が8人も出てしまった時、教師や生徒達が取った行動とは。あるいは重い心臓病にもかかわらず医者にみせてやることも出来ずに母親を失い、学校をやめて働くことを決意した生徒に対して取った行動とは。
そんな教師と生徒達が綴り貯めた作文集が、この映画の原作です。主人公の教師とは、後に明星学園教諭・教頭として長く教育の現場で活躍し、同時に28年間にわたってTBSラジオ「全国こども電話相談室」のレギュラー回答者を務め続けた無着成恭先生その人です
1952年、八木プロ。演出・監督・今井正


どぶ川学級 [DVD]

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もう一つ、同様の傾向の作品を。こちらは1972年に発表されたものですから、時代は高度経済成長期。しかし国民の暮らしは皆が豊かとは言えない時代でした。
主人公の大学生も、学費を貯める目的で、工員として働いていました。そこで職場の組合の長から、同僚の子供に勉強を教えてやってほしいと頼まれます。ところがこの子供、グレてしまって親も困っている存在。それを立ち直らせてやりたいという気持ちが、この大学生に白羽の矢を立てさせたのでした。
こうして始まった勉強は、いつの間にか12人の生徒達が集まる勉強会へと発展していきます。社会の底辺のような環境で育つ少年達が勉学の楽しさに目覚めるなど、それまでは考えられないことでした。しかし、軌道に乗ったかと思った時に発生した学校との軋轢。せっかくの勉強会は、地元のボスなどとの対立を懸念した親達からも疎まれる存在になっていきます。
少年達がやっと見つけた学び成長する場は、どうなっていくのでしょうか。ラスト近く、少年達の通う学校で生徒総会が開かれます。そこに、一度は不良化し、あるいは勉強に付いていけずに学校という場からは弾き出されていた、でも勉強会、その名も「どぶ川学級」で学ぶ喜びを身につけてきた少年達の姿がありました。生徒総会は大荒れです。一体何が起こったのでしょうか。
この作品は、多分に当時の社会背景を反映しています。少年達の自主的に生き、学び、成長していこうとする姿と、当時大きな社会問題でもあった管理教育の対比が、この作品のテーマでしょう。しかしそうした当時の社会背景を知らなくても、どぶ川だって日が当たれば光るんだというメッセージは伝わってくると思います。
1972年、「どぶ川学級」製作上映委員会。監督・橘祐典。


以上、特撮系2本と、学校を舞台にした独立プロダクション系2本をご紹介してみましたが、このほかにも、発掘して鑑賞してみたい映画はたくさんあると思います。皆さんのご家庭での映画鑑賞の一助になれば幸いです。


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