★★★(三ツ星)
日本には昔から、石や、石のある景観を楽しむ文化がありました。その代表例が日本庭園ですね。日本庭園には様々な様式がありますが、その多くに石の醸し出す自然の景観が取り入れられています。
水石という石の楽しみ方もあります。自然石を台座や水盤に砂などと共に配置して鑑賞するもので、石を飾って楽しむ習慣の元は大陸から渡来したものと思われますが、庭園・建築様式をはじめ、茶道・華道・能・連歌など様々な芸術が花開いた東山文化の中で、この室内における石の楽しみも日本独自の感性による進化を遂げ、芸術の域にまで高まって現代に至っています。
盆栽にも石を取り入れたものがあります。根が石を抱き込んだ形になっているもの、大きめの石に粘度の高いケト土などを付けてそこに植物を植えていくものなど色々な形がありますが、どれも雄大な自然の景観を感じさせる素晴らしいものです。
こうした石の楽しみを、暮らしの中に気軽に取り入れてみませんか。水石や盆栽には一定の様式がありますが、ここでは難しいこと言いっこなしの自分流で出来るやり方を考えていきます。
たとえば石付き盆栽に似た鉢を気楽に作る、石を配した寄せ植えなんてどうでしょう。適当な盆栽用の鉢を用意して、岩山にでも見えそうな石を置き、土を入れます。そこに、季節の山野草を植えていくのです。背の高い草、地を這うような草など、タイプの違う草を様々に取り入れていくといいですね。造形としては、生け花によく見られる芯・添え・控えの姿を意識すると、落ち着いたスタイルに仕上がると思います。ネット上にはたくさんの生け花作品の写真がありますから、そういうのを見て造形のイメージを膨らませ、それから植える植物を選んでいくと良さそうですね。仕上げに、土の表面や、場合によっては石に対しても、苔を貼っていきましょう。
あるいは、苔玉に仕立てた数種類の植物を、石と共に水盆の上に飾ってみる、なんていうのもいいですね。これは苔玉と石が独立しているので、時々配置を入れ換えたり、植物や石を別のものに取り替えたりして、変化に富んだ楽しみ方が出来ます。色んな苔玉植物を用意しておいて、気分に合わせてディスプレイしてみるといいですね。
石と砂を組み合わせて、水盆の上に枯山水を作ってみる、なんていうのも楽しそうです。水盆の代わりに鏡を置いてその上に作っていくと、砂を掻き分けた所が「池」や「川」になります。枯山水とは水を使わずに水のある風情を楽しむ庭園の様式のことで、それは砂などを用いて抽象的に表現されていきますが、鏡を用いて具象的に表現してみるのも面白いと思います。
こうした楽しみ方に使える石は、山道などを歩くとよく転がっています。良さそうな石を見つけたら沢の水でゴシゴシ。形や色、大きさなどが気に入ったら、新聞紙にでもくるんでリュックにポン。ちょっと荷物が重くなりますから、お持ち帰りは帰り道がいいですね。いい石が見つかった時は、とても得した気分になります。
他にも石を使って和を楽しんでいく方法は色々あると思いますが、形式にとらわれない自分流なら誰にでも出来ますし、作っている時間も出来上がりを眺めてくつろぐ時間も素敵な和の時間になりますから、ぜひ皆さんも創意工夫を発揮してみてください。そしてその成果をここで教えて頂けたら、とても嬉しく思います。