よさこいの必需品、鳴子を作ってみた!」by id:Oregano


独身の私に今回のテーマの実践報告は無理ですので、進学でこちらに出てきている親戚の女の子に子供役をつとめてもらい、簡単な木工作をやってみることにしました。用意した素材は、ごく一般的な杉板です。


「さぁ、何を作ろうか」
「踊るやつ!」
「…………」


えーと、何ですか?
よく聞いてみると、よさこいで使う「鳴子」のことでした。ははぁ、確かに面白い工作になりそうです。本物の鳴子は一般にヒノキが素材として使われますが、鳴子のそもそもは田畑に吊り下げて、鳥や動物を近付けないための道具として使われていた物ですから、その当時の素材は、加工しやすい杉だったことも十分考えられます。杉材はナタなどでスパッと割れる特徴があるので、ノコギリによらなくても簡単に板や角材が切り出せる利点があります。これが、古くから杉材が普及していた理由の一つです。そうした文化の流れも踏まえて、杉材での鳴子作りに挑戦してみることにしました。


用意した杉板は厚さ6mmと9mmの二種類です。6mmの物は羽子板型というかヘラ型の本体用に、9mm厚の物は厚みと同じ9mm幅に細長く切り出して、可動式のバチ部分に使うことにしました。バチを取り付ける軸には金属線が使われることが多いようですが、今回は竹串を使ってみることにしました。


さぁ作ってみようか。鳴子の現物がないので、ネットで写真を探して、それを原寸大の図面に書き起こしてみました。サイズはこちらのサイトによると75mm×195mmが標準型ということらしいので、それに準じてみました。
http://www.narukokobo.jp/


まずは紙に図を書いて、それを板に書き写し、本体のヘラ型を切り出す作業です。だいたい直線なので普通のノコギリで切っていけますが、取っ手の付け根部分だけはどうしても曲線で切らなければならないので、この部分は回し曳きという、ノコギリ鮫の吻のような細長いノコギリで切っていきました。鳴子は両手に持って踊るので、同じ物を2枚作ります。


子供役の彼女にやらせてみたら、きゃー曲がる、きゃー変な風に切れてると大騒ぎ。うむうむ、子供にありがちな、いい感じですw。
「引いた線ギリギリに切ろうとしないで、外側に余裕を持たせて切って構わないよ。線からはみ出している部分は、あとでヤスリで削ればいいんだから」
おそらく子供が作業するなら、最終的な形はヤスリで整える方式が失敗が無くていいと思います。素材が杉板ですから、紙ヤスリで簡単に形を整えることが可能です。


無事切り出しが終わりました。紙ヤスリの120番を板きれに貼り付けて、まずそれでノコギリで切った直線部分の修正です。板に対して正確に直角に当て、きれいな切り口になるように擦っていきます。角部分もこれで丸めていきます。柄の付け根の曲線部分はラップの芯に紙ヤスリを貼って、それで擦っていきました。


それが終わったら、紙ヤスリの番手を400番、800番と順次上げて、さらにきれいに滑らかに仕上げていきます。紙ヤスリは必ず台となる木片やラップの芯などに貼り付けて使いましょう。これで本体のヘラ状の部分の形が出来上がりました。ドリルを使って、取っ手の端に紐を取り付ける穴も開けておきます。


続いてはバチ部分作りです。これは9mm角の角材にした物を、70mmの長さに切りました。1面あたり3本、鳴子2本分で12本作ります。軸が通る穴も開けていきます。


そして忘れてならない、45度の切り欠き。この切り欠きを付けないと、取り付けたバチが動きません。これは一本一本別々に作業していると揃った形になりにくいので、3本ずつ仮に軸を通し、束ねてガムテで固定してから、まとめて切っていくとうまくいきます。これも例によって本来切るべき線の外側を適当にノコギリで落としたあと、台木に貼り付けた紙ヤスリで擦って正しい形に整えていくようにすれば簡単です。


あとは出来上がり写真を見てもらえば、だいたいの製作工程はわかってもらえると思います。バチの取付は、ごく単純なボンド貼り付けです。ただし今回は普通の木工用ボンドではなく、家具製作や楽器製作などにプロも好んで使う「タイトボンド」という製品を使いました。ガッチリと固まり湿度などの影響に強いので、とてもいい仕上がりが期待できます。


ボンドが固まれば、もう両手に持ってパチパチ鳴らしながら踊れます。杉材でも、なかなかいい音がしましたよ。なお、今回塗装はあえて行いませんでした。白木のままで、手垢で汚れればそれも良しという考え方です。木の持つ味わいは無理に塗装で押さえ込みたくない。それが今回の私達の共通した意見でした。10年使い込めば、立派な古色仕上げとなることでしょう。


今回の製作は本物の子供と作業したわけではありませんが、私も親戚の子も、たっぷり童心に返って楽しめました。木との触れ合い、木の小物作りって楽しいですね!!


さらに、家族で手作りの鳴子を持って踊ってみたら楽しいと思いませんか。こんな工作をきっかけに「イエYOSAKOI」なんて流行ったら、明るい家庭が増えそうです。こんなもん百円ショップでも売ってるよと言うなかれ。手作りだからこそ愛着が湧く、手作りだからこそ作る人と持つ人の心がつながるんです。簡単に作れて、作った後も楽しめるこんな工作、皆さんのイエでもいかがでしょうか。


最後に参考写真を何枚か添えておきます。


これが完成写真。杉の木目が鮮やかです。製作中の写真も撮ればよかったのですが、すっかり忘れていました。


バチを開いた所。鳴子には一面だけにバチが付いたもの、バチが一枚の幅広の板になっているものなど、色々な形があるようですが、今回は最もよく見かける3本バチ両面として作ってみました。


バチの取付部分の様子。本体に密着させるのではなく、1mmほど浮かせて取り付けます。


バチの尾端の45度の切り欠きのようすです。

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