「友達や家族、みんなの力でやり遂げた地域こども祭り」by id:watena


地元の商店会が主催する地域まつりイベントが、ついに終了することになってしまいました。個人商店の数が減り、続けられなくなってしまったのです。自治会が引き継いで継続開催をという声もあったようですが、自治会では毎年盆踊りを開催していますので、重複して二つの行事を行っても無駄だという声が大勢を占めていたようでした。
しかし私達子供は、それをとても残念がりました。お店の数が減って商店会の力が弱くなった分を、毎年地域の子供会が支えて、協力してきたからです。僕たちのまつりが無くなる。それは小学校の6年間を毎年「今年も頑張ろう、来年も頑張ろう」と言い合って過ごしてきた子供たちにとっては、とても残念なことでした。
当時私たちは6年生。子供会では最上級生です。緊急会議だ、放課後集合!みんなで話し合った結果、商店会で開けなくなったなら今度は子供会が主催すればいい、ということになりました。
「子供だけでできるのか?」
「違うよ、主催と協力を入れ換えるんだよ。」
「どういうこと?」
「商店会主催、子供会協力を、子供会主催、商店会協力に入れ換える。」
「そんなこと出来るのか?」
「はいはいはい、俺のおじさん○○商店だから聞いてみる。」
「よーし、決まった。お前んとこのお父さん、自治会の子供会担当だよな。」
「うん。お父さんとも相談してみるよ。」
最後の「お父さんとも相談してみるよ」が私です。その日の夜、早速父に意見を聞いてみました。
「問題は開催場所だな。実は毎年会場になっていた場所が、今度から使えなくなったんだよ。」
「なんで?」
区画整理事業っていうのが始まるんだ。それで、これを機会に商店会の夏祭りも幕を下ろそうってことになったんだよ。」
「そうなんだ。盆踊りは?」
「それは会場が変わるかもしれないけど必ずやると思うよ。」
「それならば!盆踊りって夜じゃない。昼間そこで子供のまつりをやろうよ!」
「それなら可能性は高いな。」
翌日学校でみんなに報告。父も自治会の話し合いにこの件を出してくれて、話はトントン拍子に決まっていきました。そして迎えた夏。私達はまつりの開催に向けて活動を開始しました。
6年生は大人との折衝が任務です。商店会や自治会などの大人の人とのやりとりを担当します。商店会は、色んな食べ物のお店を出してくれることになりました。
場内警備をしてくれる消防の人達との打ち合わせも6年生が行います。さらに、まつりに付き物の協賛品や協賛金集めにも回りました。もちろん物やお金のやり取りは大人の間で行ってもらいますが、お願いしますと頭を下げに行くのは子供の役目です。
「○○工務店協賛ゲット!スーパーボールすくいセット一式〜。」
「すげーじゃん、大工さんて商店会には入ってないんだろう?」
「うちの父ちゃんの釣り仲間なんだよ」
「去年より豪華になりそうだな」
5年生や4年生は、くじ引きや輪投げなどの出し物作りです。等身大の鬼にボールを投げて、的に当たったら目が光ってガオーと叫ぶ「的当て」も作りたいという意見が出て、ベニヤ板製の立派な赤鬼も登場しました。しかしボールが当たった時の動作装置が開発できず、結局、的に当たったことを判定する係、懐中電灯で後ろから目を光らせる係、鬼の腕を動かしながらガオーと叫ぶ係の3人がかりで動かす「人力的当て」になりました。
3年生以下はポスターと招待状作りです。招待状は、地域の色々な会の人達や、違う町内の子供たちに向けたもの。ポスターを貼らせてもらったり、招待状をお届けするのも、みんな子供が行いました。もちろん大人が付き添いますが、これには子供会担当のうちの両親が大活躍してくれました。
盆踊りは日曜日なので、前日の会場設営には、土曜日でお休みのお父さん達がたくさん手伝ってくれました。こうして迎えた第一回こども夏まつり。心配ごとは二つだけ。一つはお天気でしたが、こちらは天気予報が晴れマークで完璧でした。
もう一つの心配は、来場者数でした。地域の子供たちはみんなスタッフ側ですから、お客さんではありません。よその町内の子供たちが頼りです。でもこれも蓋を開けてみたら大盛況。夏休み初日からお盆まで、毎日のように準備に頑張ってきた私達は、お母さん達の会が作ってくれた子供会の腕章を付けて、ちょっと誇らしげでした。
この夏は子供たちみんな、今までしたことのない努力をし、みんなで一つの目標に向かって力を合わせるという経験をし、そして今まで味わったことのない感激を得ることが出来ました。学年を越え、男子と女子との違いも越えて、手を取り合って喜びました。地域の大人と子供、イエの中での親と子、みんなで手をつなぎ合って一つの行事が開催できたことは、きっと地域もイエも変えていく大きな力になったと思います。


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