★(一ツ星)

「様々なライフステージや用途に対応する《がらんとした和室》」
by id:TomCat


物を置かない畳の部屋。こういう部屋が一部屋あると、とても暮らしが豊かになると思うんです。


まず、子供が小さな時期。転んでも痛くない畳の部屋は、小さな子供のプレイルームに最適です。それに遊び疲れて寝てしまっても、畳なら板敷きに比べて下からの冷えが穏やか。小さな子供は大人に比べて、ずっと床に近い位置が生活空間ですから、畳という優しい素材が最適です。


最近は畳のない家が増えていますから、ご近所のお母さんや子供達も集まって楽しい時間が過ごせるイエ、なんていうコンセプトで和室を作ってみるのもいいですね。


少し子供が大きくなってきたら、和室で劇をして遊びましょう。たとえば子供がお殿様。ちびっこお殿様の前で、お父さんが完璧な礼法に則った和室での作法を演じて見せたりするんです。一通り終わったら、今度は役柄交代。こういう遊びの中から、畳の部屋の歩き方、座布団への座り方降り方、正座の仕方、正しい挨拶の仕方などが楽しく身に付きます。


和室でちょっと特別なお食事会、なんていうのもいいですね。箱膳を使った高級料亭みたいな食事から、卓袱台を使ったサザエさんのお家みたいな食事まで。最近は椅子とテーブルでの食事しか経験のない子供が増えていますから、きっとこういうのも新鮮な体験になっていくことでしょう。こうした中から、和食の作法も身に付きます。なお、和室だからといって、料理は無理に和食にこだわる必要はありません。こういう時ほど、子供が好きなメニューで揃えましょう。お箸で食べられるお料理なら、何でもいいですね。


正しい礼法に則った和室での振る舞いや仕草には、まるで舞を見ているような美しさがあります。インストラクター役の大人はぜひ、お父さんかっこいい!お母さん綺麗!と言われるような身のこなしで、子供をアッと言わせられるようにがんばってくださいね。和室があれば、大人だけで密かに和の作法のお勉強、なんていうのも可能です。誰の前に出ても恥ずかしくない身のこなしを身につけておくことは、子供が誇れる親であるためにも大切です。


もっと子供が大きくなってきたら、畳の部屋で色々な和文化体験をさせてあげましょう。習い事ではありませんから、楽しく体験できればそれでいいんです。書道なんて畳の部屋にぴったりですね。お正月の書き初めや、七夕の短冊書きなど、季節の行事に合わせて行っていきましょう。


それから、お茶やお花。これらもけっして女の子だけのものではありません。もともと華道は、代表的な武家屋敷の造りである書院造の定着とともに発展してきたもの。茶道も、織田信長の「御茶湯御政道(おちゃのゆごせいどう)」によって、格式の高い武家儀礼として定着してきたという歴史があります。もちろんイエでやるなら、お茶もお花も型にはまる必要はありませんから、伝統のエッセンスさえきちんと踏まえていれば、あとはそのイエ流でOKです。


子供が受験を控えるような年齢になってきたら、和室は心を落ち着け、安らげる空間として活用させていきましょう。がらんとした何も無い和室で静かに過ごすひとときは、きっとストレスを和らげてくれることでしょう。こういう和室の使い方は、何かと心が疲れがちな大人にも有用ですね。


現代のイエに欠けているのは、こういう心を癒す侘び寂の空間。今は居住「空間」といいながら、全ての部屋を実用で埋め尽くして、「空の間」を設けないんですよね。でも、日本の文化は「空」を重んずる文化。何も無い空間にこそ美を見いだし、そこから心の安らぎを得てきたのが、日本人の美意識だったと思うんです。そういう侘び寂の間がリビングに匹敵するくらい重要な存在なんだ、という考えへの転換が、新しいライフスタイルの扉を開く、一つの鍵になっていくことでしょう。


そうは言ってもただでさえ狭い家、その一室を何も無いがらんとした空間にしてしまうなんて、と思われるかもしれません。でも、和室ならそれが可能なんです。和室の良さは用途の柔軟さ。ですから、押し入れから座卓を出してポンポンと座布団を置けば、さっきまでのキッズのプレイルームが、もう応接間に早変わりです。床の間のある部屋なら、どんなお客様をお通ししても恥ずかしくない、品格ある応接間として通用します。さらに再び座卓をどければ、お茶のお点前でおもてなしも出来るマルチウエイの応接間。布団を敷けば、不意の泊まり客の寝室にも使えます。


大人の楽しみとしては、何も物を常設しないがらんとした和室を、季節の「室礼」で彩るキャンバスにしていってください。

◆室礼→ http://q.hatena.ne.jp/1252471828/232224/#i232224


やはり室礼のメインステージは床の間です。床の間に季節を表現する楽しみは、まさにアート。暮らしの質が高まって、アートする喜びも満点の室礼は、一生の趣味になりますよ。


こんなふうに、子供のライフステージに合わせて活用でき、大人の趣味空間としても、和室特有の用途の柔軟さを活かしたゲストスペースとしても幅広く使っていける「がらんとした和室」。一部屋あったら、本当に素敵で便利な空間になってくれると思います。


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ミシュランコメント

これまでにも「和室」の素晴らしさや活用術をずいぶん教えていただきましたが、この「空の間」が現代の暮らしに素晴らしく豊かな和文化をもたらしてくれること、あらためて驚きました! プレイルームから手習いや家族コミュニケーション、季節行事に食事会、さらには心静かな詫び寂の時間まで、子どもにも大人にも実にさまざまなライフステージで文化的な時間を生み出す空間なんですね。でも、このメッセージのように意識されていなければ、和室はただの畳の部屋。和室でどれだけ日本ならではの文化と創造に満ちた時間を過ごすか、あらゆる可能性をご指南くださったメッセージに、大きなを送ります!