「初夏の鯵を味わう」by id:CandyPot


年間を通して市場に出回る魚ですが、最も旨いのは産卵を控えて栄養を蓄えた初夏から夏(5月〜7月)頃です。初夏の魚というと「目には青葉 山時鳥(ほととぎす)初松魚(かつお)」ということでカツオが有名ですが、これは食の歳時記で言ったら「旬」ではなく「はしり」。アジの方は今が旬です。


さて、新鮮な旬のマアジが手に入ったら、なんといってもまずタタキで味わいたいですね。カツオもタタキにして食べますが、アジのタタキとカツオのタタキは名前は同じでも、全く違う作り方です。アジの場合は本当に包丁でタタキます。


タタキ作りの基本は三枚下ろし。三枚に下ろしたら真ん中の中骨は使わず、左右の片身の皮を剥ぎ、腹の骨を毛抜きのような物で抜いて、血合いを取り除けば基本のサクは完成です。小さなアジの場合、腹の骨は包丁で削ぎ取ってもいいでしょう。
基本のサクが出来たらこれを適当な大きさに刻み、長ネギ、万能ネギ、ショウガなどのみじん切りと共に包丁でリズミカルにタタキながら混ぜていきます。これを、大根のツマや大葉をあしらった皿に盛って出来上がりです。


アジのタタキのいい所は、出刃包丁一丁で作れること。普通のお刺身のように柳刃で引いていく作業がありませんから、とても手軽なんです。包丁捌きに自信が無い人は、売り場で三枚に下ろしてもらう所までやってもらってもいいですね。
タタキの味の決め手は細胞が劣化しないタタキたてであることですから、叩く所だけをイエでやっても十分旨いタタキが楽しめます。イエで手作りのタタキは絶品です。価格もお手ごろですからたっぷり食べられますね。


旬のアジのタタキは、そりゃもう旨いですよ。アジは比較的脂肪分が少なくあっさりした魚ですが、旨味の決め手であるイノシン酸は非常に多く、コクのある旨味が楽しめます。またDHAタウリンも豊富ですから健康にもいいですね。


タタキに使わなかった中骨は、塩少々を振って15分ほど締め、小麦粉か片栗粉をあっさりとまぶして、低温の油でじっくり揚げると、骨までバリバリ食べられるアジせんべいになります。揚げ方のコツは、最初はテンプラと同じくらいの温度まで油を熱し、豪快にジュワーッといわせること。これで生臭みが消えます。その後火を弱め、油の温度を下げてじっくりと約10分。揚がったら油を切っれば、カルシウムたっぷりの海のおやつの出来上がりです。
最近は魚嫌いの子供が多いと聞きますが、その理由の多くは、骨があって食べにくいということだろうと思います。子供も刺身は大好きなことが多いですし、その骨もアジせんべいにすればバリバリ食べられますから、お子さんのいるご家庭にも、旬のアジはお勧めできると思います。


店頭での鮮度の見分け方は、まず目を見ます。澄んだ目をしていれば第一段階は合格です。鮮度が落ちると濁った目や赤い目になっていきます。
体は、よく青光りしている、腹部が高く盛り上がっている、ゼイゴ(アジの仲間に特有の尾から細長く伸びている固いウロコ)がしっかりしている、この3項目をチェックします。
エラが見られたらエラの中も見てください。ここが鮮やかな色をしていれば鮮度は良好です。鮮度が落ちると黒ずんできます。エラから汁が流れ出ているような物は生では食べられません。
最後に、弾力が確かめられればいいですね。ゴムマリのような弾力があれば鮮度は良好です。固くなっている物はやや鮮度が落ち始めている物。さらに押しても戻ってこないような物はかなり鮮度が落ちている物です。
さらに最終チェックとして、売り場で包丁を握っている人に「これ刺身でOK?」と聞いてみれば安心ですね。


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