★★★(三ツ星)

「素朴さで空間を統一するというインテリアのリニューアル」
by id:momokuri3


友人の家に招かれてお邪魔したら、そのかっこよさに驚きました。全体がアンティックなカントリー調で、落ち着いたとてもいいイメージにまとめられているんです。しかしそこに並べられている家具類は全て、奥さんの「リメイクやりかけ品」あるいは「失敗品」とのこと。


奥さんはDIY好きで、特にぼろぼろの中古家具のリメイクが好きとのことなのですが、傷だらけの塗装を塗り替えようとして塗装剥がしだけで力尽きたテーブルとか、下塗りのニスをしっかり剥がさずに上塗りしたら色ムラになってしまったチェストとか、そんなのばかりが並んでいるんですね。


しかしその無塗装や塗りムラが、なんとも素朴ないい感じなんです。奥さん手作りの素朴なファブリック類が、逆にそれらを引き立てています。まるで開拓時代の古き良きアメリカのイエのよう。


そこでハッと気付きました。インテリアに大切なことは統一感なんです。キズ一つ許さないツルツルピカピカの調度でまとめる統一感にも、こうして全てが「素朴」でまとめられる統一感にも、上下の差はないんですね。差が出るとすれば、それは空間全体をどうまとめていくかというのセンスの問題だったんです。


木などの自然素材の持つ無垢の良さを生かす。古さも、キズも、修復しようとして失敗した所だって味のうち。そう考えていくと、モノを新品同様の状態に戻すという意味のリペアとはちょっと違う、新しいリペア・リメイク・リニューアルの方向性が見えてくると思うんです。


さっそく私もその方向性で、ひとつ仕上げてみることにしました。材料となったのは、私の部屋のボロい机です。なまじ元がツルツルピカピカだったから、年月がたってそのボロさが目立ってみすぼらしくなってしまったんですね。そこでこれを、木の持ち味を生かす素朴な姿に変身させてみることにしました。


まず塗装剥がし。机を庭に出してガガーッとサンダをかけて、主要部分の塗装を落とします。幸い薄い塗装だったので、さほど手こずらずにはがすことができました。


天板は今回は手を付けません。分厚いウレタン塗装がかかっていましたので、深い傷のみ部分修正して終わりです。手に負えそうもない部分には手を付けない。これも家具リメイクの一つのコツと言えるでしょう。


続いて引き出しの加工です。前面には化粧板が貼られていましたが全て除去。化粧板てやつは劣化してくると、見事にボロさが目立っていけません。代わりに自然素材そのままの、3mm厚のメイプルの薄板を貼ってみました。表面をサンドペーパーで磨いたら、メイプル特有の白い木肌の美しいこと!


続いて塗装です。机の本体は、奇しくも今回の出題例でhazamaさんが書かれていたのと同じ、オイルステイン仕上げでした。オイルステインは塗料というより着色剤に近い物ですから、表面に塗膜と言えるような層は形成しません。だから塗りムラが出ないんですね。とても使いやすく、そして木の風合いが生きる仕上げ方です。下地のボロさを隠す意味もあり、やや濃いめの色に仕上げました。
http://d.hatena.ne.jp/ie-ha-te-na/20100507#Michelin


引き出しの方は、それと対照的な白木が魅力の明るい木肌のメイプルです。そこで汚れを防ぐ意味で、軽くクリアラッカーを薄く吹くのみにとどめました。
ラッカーにはセルロースラッカーとアクリルラッカーがありますが、一般に売られているスプレーはほとんどがアクリルです。アクリルラッカーは厚く塗ると塗膜にいつまでもブヨブヨ感が残り、すっきりとした仕上がりになりません。ですから、アクリルラッカーは薄くあっさりと吹くだけにするのがコツなんです。


これで木の持ち味が生きる、素朴ながら味わいのある机に大変身しました。この机を、買った時と同じような姿に戻そうとしたら、ちょっと素人には手が出せない作業になってしまったことでしょう。しかしツルツルピカピカの世界から離れて木の持つ素朴な味わいを大切に仕上げていくなら、素人作業でも十分すてきなリメイクが可能です。


不思議なもので、机がこんなふうに変身したら、何の塗装もかけていない合板丸出しの自作のスピーカーボックスまでが、とてもナチュラルなインテリアのように見えてきました。おや、ハンマーキズや刃物キズでボロボロの工作台も、いい感じで空間にマッチしてきたようです。あとはファブリック使いのセンスが向上すれば、私の部屋もなかなか捨てたモノではなくなりそうです。


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★★★ ミシュランコメント

リメイクの発想が、インテリア作り&コーディネートの素晴らしい発見につながった体験メッセージ、これにはオドロキでした! ご友人のイエでのヒントをもとに見つけられたインテリアの「統一感」、天然木に手を加えて創り出す「素朴」な味わい。まずはお部屋の古い机をクラシックなインテリアに甦らせて、まわりのモノたちとの素朴な調和を見られたプロセスが手にとるように伝わってきました。この考え方でモノにお手入れをつづけていくたび、お部屋はどんどん住む人のテイストに磨き上げられていくことでしょう。ここでもやはり経年してなお美しい木という素材が生きていますが、どんなテイストであっても、自分の好きなカラーや統一感を大切にお手入れ&リメイクしていくことが、イエのデザイニングになるんだ! 何よりこの考え方をピンと教えてくれたメッセージに、感激の★★★贈呈です!!