「風鈴は魔除けグッズだった!!」by id:Oregano


お寺さんのお堂の軒先などに、こんな鐘のような物が提げられているのを見たことはないでしょうか。
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これは風鐸と呼ばれる一種の魔除けで、古代インドに始まり、中国を通って仏教とともに伝来したものの一つだそうです。
これを「風鈴」(当時の読み方は『ふうれい』)と名づけたのは浄土宗の開祖、法然上人なのだそうです。法然上人は風鈴をこよなく愛されたと言われていて、こうしたことがきっかけになって魔除けのアイテムが浄土に吹く風を思い起こさせる宗教的情操を育む存在に変わり、後にそれが一般化して風流や涼を楽しむ物となっていったようです。


そもそも鈴は、世界の様々な場所で、魔除けの道具として、あるいは神様などを喜ばせる音の捧げ物として使われてきました。
日本では土鈴がお守りに使われたり、神社で授与されるお守りに鈴が付いていたり、巫女装束の女性が鈴を手にしながら舞ったりしますが、そうした鈴の音によって神様がご降臨されるとか、払い清めの波動になるとか、神様が願いを聞き届けてくださった時に鳴るとか、色んな言い伝えがあるようです。


また牛や水牛などの家畜の首に鈴を付ける習慣があるところも少なくありません。これには、
・牛の位置が音でわかる
・野生動物や盗賊に襲われるのを防ぐ
・鈴に番号や牛の名前を書いておくと個体識別票として使える
・飼い主の名前を書いておけば他の群れと混ざってしまっても見分けがつく
などの実用価値がありますが、そのほかに魔除けの意味も持たせていた所が少なくないと聞いています。


鈴と似た物に鐘がありますが、鐘の元祖のような物はすでに紀元前には登場していたといわれ、近東地方では神様を呼ぶ合図として、あるいはお守りなどとして用いられてきたそうです。日本の鈴とよく似ていますね。
教会でお馴染みの鐘は、ギリシャ正教から北アフリカ修道院に伝えられた後、6世紀から8世紀ごろの間にヨーロッパにもたらされたと言われているようです。キリスト教と鐘が結びついたのは聖書の成立よりずっと後ですから、教義とは全然関係のないアイテムですが、それでも通俗的には、鐘の音は悪魔を支配し、退け、教会の神聖性と正義と奇跡を証しするものと考える人が少なくないようです。


こうして見ていくと、鈴の音って、何か秘めた力があるのかもしれませんね。科学的には何の根拠も見いだせませんが、世界の様々な場所で、時間を越え、民族や文化の違いを越えて、同じように神聖な音と受けとめられていたことは、ただの偶然ではないと思います。少なくとも、鈴の音には、人にそう思わせる何かがあるのでしょう。


最近音楽療法というのがありますが、その中でも鈴の音の効果に注目している人たちがいるようです。風鈴のような周波数の高い音は心を落ち着かせるとか、物体が振動すると多くの場合基本の音の整数倍の振動(高調波)も同時に発生しますが、風鈴は基本の音が高いために耳に聞こえない超音波領域の高調波成分も多く、それが何かの役割を果たすかもしれないとか、あるいは風鈴の音にもいわゆる「1/fゆらぎ」(スペクトル密度が周波数に反比例するゆらぎで、人間の臓器の動きを含む様々な自然現象に見られるとされているもの)があるのでそれがヒーリング効果を発揮するとか、色々な仮説が提唱されているようです。


こうしたことが科学的に解明されるのはまだちょっと先のことになりそうですが、とにかく風鈴には、夏の風物詩だけにとどまらない意味がありそうです。最近は風鈴が騒音扱いされる時代ですが、魔除けや室内の気を浄化するためなら、室内で鳴らしても十分意味があるでしょう。そう考えると、風鈴の楽しみ方が広がると思いませんか。


ちなみにわが家では、玄関の扉に小さなベルを付けています。これを付けた時は、開け閉めが音でわかる、なんとなくかわいらしい、といったことしか考えていませんでしたが、もしかすると扉にベルを付ける習慣にも、家の入り口を邪気からガードする意味があったのかもしれませんね。


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