「革を縫う」by id:momokuri3


最近ちょっと革を縫うのにはまっています。
今作っているのはモバイルノートPCのカバーです。私が持っているのは幅189mm、奥行き155mmという小型サイズ。今持っているバイブルサイズのシステム手帳が190mm×130mmくらいですから、ほぼ同じようなサイズです。そこでこのPCに、システム手帳みたいなデザインのカバーというか、表紙?を作ってやることにしました。
材料は袋に詰め放題のワゴン売りをしていた革の端切れです。何かに使えるかもとずいぶん前に買っておいた物が、やっと日の目を見ることになりました。


革細工はほとんど未経験の分野なので、まず最初は作ってみたい形を紙で試作してみることから始めました。革と違って厚みがありませんから、試作品の紙片をそのまま型紙にすることは出来ませんが、どんな構造にするか色々考えるのは、とても楽しい時間でした。


色々考えて、ファスナー付きのシステム手帳「ファイロファックス キューバンZip」の構造を真似させてもらうことにしました。これなら資料やメモリカードなどを一緒に入れても落とす心配がありません。スタイラスペンも安心して持ち歩けます。
http://item.rakuten.co.jp/isxl/filofax30/


さて、革細工の実際についてですが、革を縫うためは、特に厚手の革を相手にする場合、いくつか専用の道具が必要になります。たとえば「ステッチンググルーバー」。
http://www.kawazairyo.com/?pid=620632
これは革の表面に溝を掘る道具で、これで縫い目部分を軽く掘っておくと、糸の擦り切れを防止することが出来ます。布と違って、革の場合は素材と縫い糸とが同化しませんから、こんな配慮が必要になってくるんですね。
基本的な使い方はこんな感じですが、
http://kiyoturukan.sub.jp/make/leather/lightercase/030c.png
私は革の縁に当てるのではなく、物差しを当てて使いました。その方が不慣れな素人には合う感じがしました。
この写真では革の端ギリギリ一杯まで溝を掘らず、少し間を空けていますが、これは革の強度を損なわないための配慮です。端2mmくらいは掘らずに残しておくことが大切です。
自在なラインで溝掘りをしていくためには、こんなグルーバーもあります。というか、こちらの方が道具としては元祖で、ステッチンググルーバーはその進化形ですね。
http://www.kawazairyo.com/?pid=10135590


「へりおとし」は、革の切断面を面取りしていく道具です。
http://www.kawazairyo.com/?pid=6612359
刃先の溝を革の切断面のカドに当ててすーっと押していくと、直角の切断面が


  ↓面取り部分
 ̄ ̄\
   |
 ̄ ̄ ̄
こんなふうに削れます。


こうした革の切削には、革の繊維の方向を考慮する必要があります。木に木目があるように、革にも繊維の方向性がありますから、繊維の流れに沿っていけばきれいにたやすく切削できますが、その直角方向は掘ったり削ったりがしにくいのです。ですから原革からパーツを切り出す時は、縫い目や重なりしろのことをよく考えて、切削が必要な辺が出来るだけ革の繊維の方向と一致するように考えて切り出します。


なお、革の切り出しは、カッターナイフでも何とかなりますが、厚手の革は専用の革包丁があるときれいに切断できます。
http://www.kawazairyo.com/?mode=cate&cbid=33651&csid=7


革を手縫いしていくためには、下穴を開けなければなりません。そのために使う道具が目打ちです。目打ちには菱目と平目があり、穴を1つ開ける物から、フォークのような形をした複数の穴を一気に開ける物まで色々あります。また開く穴の大きさや、穴と穴との間隔にも色々な種類がありますが、私は2mm 穴を開ける菱目打の6本フォーク型と1穴用の2種類を用意しました。
http://www.kawazairyo.com/?pid=19312612
下にゴム台を敷き、上から木槌でガツンとやって穴を開けます。ただし多穴の目打ちで上手に穴を開けていくのは力の入れ具合が難しいので、まず多穴目打を当てて軽く叩いて印を付け、その印をガイドに1穴目打で穴開けする方が失敗がないようです。


革用の縫い針には、まるで手術用みたいな曲がり針やレース針と呼ばれる特殊な針もありますが、普通に縫うだけなら、木綿針の親分みたいな革用丸針で大丈夫です。使う糸の太さに合った物を使います。
糸は、麻製、ナイロン製などがありますが、初心者には、毛羽立たない、端の処理がしやすいなどの理由で、ナイロン製が使いやすいようです。糸はロウ引きをしてから使いますが、すでにロウ引きされている糸が売られていますから、それを使うのが手間無しです。
縫い始めと縫い終わりの糸の端は、2mmくらい飛び出させておいて、ライターの火などで軽く炙って溶かして押さえつければOKです。


このほか、革細工には色々な道具が登場しますが、色々な道具を少しずつ揃えていくと楽しいですね。薄手の革を縫っていくだけなら、目打ちと針と糸だけで何とかなります。


詳しい道具の解説や具体的な縫い方は、写真付きで詳しく解説してくれているサイトがたくさんありますからそちらを見ていただくとして、革ってこんな感じで縫っていくのかということが、何となくでも伝わりましたでしょうか。革を縫っていくのはとても手間がかかる作業ですが、没頭しはじめると靴作りの妖精さんが来てくれるようで、気が付くとすごく作業がはかどっていたりします。革細工は工作といってもいいような世界なので、裁縫経験が少ない人でも大丈夫です。


最後に革についてですが、一般に出回っている牛革は食肉の副産物と考えらますから、毛皮を取るためだけに飼育され殺されていくミンクやチンチラなどとは事情が違うと思いますが、地球温暖化や気候変動の要因の一つと考えられるアマゾンなど密林の乱伐採の一部が、安価な牛肉や牛革を生産するための牧場作りのために行われていることには注意を払う必要があります。一説にはアマゾンを切り開いて作られた土地のなんと8割がそうした牧畜用途に使われているという話もあります。
牛肉や牛革の需要が、貴重な自然の破壊につながっているとしたら大変です。牛革は優れた素材ですが、その需要が不法な伐採や乱暴な森林の焼き払いにつながらないよう、私たち消費者もしっかりとした目で監視していかなければならないと思います。牛革や牛革製品にも、BSE問題とは別の意味で、原産地が確認できる制度がほしいですね。


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