「上巳の節句ハハコグサby id:YuzuPON


雛祭りというと男にはちょっと縁遠いですが、上巳の節句といえば男女の別なく特別な日になります。昔の中国ではこの日に川で身を清める上巳の祓という習慣があったと言われ、日本では平安時代には野山で野草を摘み、その薬効で厄を祓うようなことも行われていたと言われます。
そこで節句に先立つ日曜日に、ちょっと草を探す散歩をしてみました。東京でもちょっと緑道に入れば、けっこう色んな植物に出会えます。


薬効があって厄が祓えそうな草というと何だろうと探していると、いいものがありました。ハハコグサです。これはキク科ですから、重陽節句に厄払いとして使われる菊の親戚です。またこれは春の七草ゴギョウのことですから、縁起がいいことこのうえありません。
さらに江戸時代に著された「本草綱目啓蒙」(小野蘭山著)には、かつて3月3日にはハハコグサで草餅を作っていたと書かれています。こんなに3月3日向きの草はありません。


本草綱目啓蒙〈1〉 (東洋文庫)

本草綱目啓蒙〈1〉 (東洋文庫)


東京大学理学部附属植物園所蔵本の紹介が載っているページ
http://www.um.u-tokyo.ac.jp/publish_db/1998sfl/chapter1/03.html


もちろん薬効もあります。ハハコグサを干した物は鼠麹草(そきくそう)の名を持つ生薬で、主に呼吸器や喉の炎症を鎮めると言われています。


ハハコグサも他の多くのキク科の植物と同じように、冬は根出葉をロゼットにして冬越しする草ですから、まだ取ってしまうのは可哀想な感じの育ち方ですが、イエはてな流野草摘みの掟にしたがって(笑)、1本あたり数枚の葉をもらいながら、いくつもの株をハシゴしていくことにしました。小さな葉なのであまり量は取れませんでしたが、縁起物ですからこれで十分です。


これを熱湯でゆでで、水につけてしばらくアク抜きし、みじんに刻んですり鉢ですって、練った餅粉に混ぜてさらによく練って団子にして蒸し上げると、ハハコグサの草餅ができあがります。うちにも母のお雛様がありますので、ささやかに作ったハハコグサの草餅をお供えしてみました。後で家族で一口ずつ食べてみました。ヨモギほどの香りの強さはありませんが、春らしい鮮やかな緑の草餅でした。お節句と早春の味覚の両方が楽しめた、いい経験になりました。
本当の旧暦の3月3日には、もっとたくさん取れる大きさに育っていることでしょう。また摘みに行って、節句の草餅を楽しんでみたいと思います。


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