敦煌莫高窟発掘レシピ?ヤマイモの神仙粥」by id:momokuri3


既にヤマイモのツリーはありますが、こちらはそのヤマイモをメインに据えた「神仙粥」です。

敦煌の散逸書物に多く見かける医療養生文献から、専門家の注目を集めている「神仙粥」というおかゆのレシピが発見された。山芋などの漢方薬で調理されるこの敦煌神仙粥は中国最古の山芋粥レシピであり、その効用は既に実証済み。敦煌研究院の王進玉研究員によると、神仙粥のレシピはP.3810番の書物「呼吸静功妙訣」という道教経典に記載されており、その内容は現代語に翻訳すると、「山芋500グラムを蒸し上げて皮をむく。オニバス250グラムを茹でて殻をとって粉末状にし、うるち0.5リットルと混ぜる。とろ火で粥を
炊き上げ、空腹状態の時に食べる。にらを細かく刻んでいれると一層効果が上がる。食後は熱い酒を飲むべし。」と記載されている。P.3810番の書物を鑑定した結果、これは唐時代末期から五代時期(約西暦900年)の間の写本である。山芋の食用法は様々で、各地の山芋粥の炊き方もそれぞれ違うという。 (AIP 中国新華社
http://www.jinenjo.net/sanyaku.htm


だいたいサイトを検索して出てくる文章は、上の新華社電なるものです。こういう日付の記されていない海外ニュースというのは誰かの創作だったりすることが多いようですが、ヤマイモ、ハスの実、ニラとくれば、これは滋養に富むことは疑い無しです。


ヤマイモは漢方では山薬(さんやく)と呼ばれ、中国後漢代より三国頃にかけての時代に編纂されたと言われている神農本草経にも薯蕷の処方名で掲載されています。帰経は脾・肺経。補気薬として分類され、気、つまり生命エネルギーが低下した時にそれを補ってくれる物とされています。
現代人は不定愁訴、原因のはっきりしないだるさやめまい、疲労感、イライラ、頭の重さ、不眠などに悩まされがちですが、そういう体に気を注入してくれるのが補気薬なんです。そのひとつがヤマイモというわけです。


ハスの実も「けん実」(けんは草冠に欠)と呼ばれる生薬で、漢方でも山薬、つまりヤマイモとの組み合わせが出てきます。中国では昔から滋養強壮によいとして、お粥やスープに入れたり、蒸してシロップ煮のようにしたり、砂糖と共に煮て裏ごししたものをあんこのように使ったりしていました。


そしてニラ。豊富な栄養と共に腎を養うとされる食材です。漢方で言う腎は腎臓だけでなく内分泌系など体のバランスを司る経路全体を指しますから、腎を養う食材は巡り巡って体全体の機能を高めてくれると考えられます。これらを組み合わせた「神仙粥」は、疲れた体にたっぷりと気を注ぎ込んでくれるに違いありません。


さっそく作ってみることにしました。前述の新華社電なるものには米0.5リットルとありますから、これはおよそ3合弱にあたります。これをヤマイモと混ぜてお粥にするとかなりの量になりますから、量は1/3でいってみましょう。


・米 1合(古代レシピですから精白米ではなく、ビタミンB群などの残る七分搗きを使ってみました。今回は生米のまま使っています。あらかじめ研いでしばらく浸水しておきます)
・山芋 166g(3で割ったので半端な数字w)
・ハスの実 83g(殻付きの場合の重量)
・ニラ 適宜


ハスの実は普通のスーパーなどでは見かけませんね。中華食材などを扱っている店を探すか、通販で入手してください。
さて、新華社電なるものではヤマイモを蒸すと書かれていますが、どうせお粥にするならそこで加熱されますから、今回はただ適当にザクザク切って加えることにしてみました。
ハスの実は茹でて殻を取って粉末状とのことですから、まず茹でてみました。殻を取って潰して1個試食。う、ちょっと苦味があります。これは丸ごと潰したので、蓮心と呼ばれる胚芽部分の味が混ざるためです。通常の料理ではこの部分は取り除かれます(蓮心を取り除いたハスの実は蓮肉と呼ばれます)。さて、この蓮心をどうしたものか。考えた結果、漢方ではこの部分にも薬効があると考えますから、今回は入れることにしました。全部殻をむいて潰します。蓮心は固いので、よくすり潰してください。皆さんは実全体を潰した物を1口試食してみて、苦手な味だと思ったら蓮肉だけにしてもいいでしょう。
ニラは薬味風に刻んでおきました。量は多め。ハスの実の味をごまかすためです。
水 5〜6合程度を鍋に入れ、ニラ以外の材料を全て入れて、一煮立ちしたら弱火でゆっくりと炊いていきました。ご飯がお粥状になってきたらまずニラの根に近い部分を入れてしばらく煮て、仕上げにニラの葉先部分を加えて一呼吸。火を止め、鍋にフタをしてしばらく蒸らして完成です。ニラはあまり煮すぎないようにしてみました。


食べてみました。おー、けっこういけます。これは体が温まります。慣れないハスの実の味も全く気になりませんでした。塩一つまみも加えていない素材のみの味もまたいいものでした。「食後は熱い酒を飲むべし」とのことでしたので、熱燗を一杯いただきました。おいしゅうございました。
なお、ハスの実が手に入らなかったり、これの味が苦手な人は、松の実などでやってみてもいいと思います。莫高窟から発掘されたというこのレシピ、皆さんなりのアレンジを加えて楽しんでみてください。


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