「冬のことわざ、いま、むかし」by id:Fuel


◆冬の雪売り
冬に雪など珍しくもない。冬に雪を売ろうとしても買い手が付くわけがない。転じてありふれたものには魅力がないという意味のことわざです。
例:
「ねぇねぇ、こういうサプリのアイデア、いいと思わない?」
「うーん、イエはてなではちょっと冬の雪売りかな」
「がちょーん」
しかし現代の日本では、真冬でもめったに雪が降らない地域が増えてしまいました。もしかするとそのうち「冬の雪売りとは貴重なものや魅力的なものを提供することのたとえ」なんていう時代が来てしまうかもしれません。
近未来の例:
「ねぇねぇ、こういうサプリのアイデア、いいと思わない?」
「おっ、いいね、これって冬の雪売りだよ」
「別の意味でがちょーん」


◆寒に帷子土用に布子(かんにかたびら どようにぬのこ)
帷子は一重の着物、布子は綿入れのこと。そんな季節外れの着物を着ていたら、冬は寒く、夏は暑くてたまりません。転じて、物事が逆さまであることや、本質を外して役に立たないことのたとえに使われます。
ただしこの言葉にはもう一つ、季節に合った衣服も揃えられない貧困、という意味もあります。長年続いた悪政で格差が拡大して、それがなかなか直せない今の日本。冬のコートがほしくても買えない、夏用スーツを揃えたくても予算がない、という人も珍しくなくなってしまいました。似たような言葉に「冬編笠に夏頭巾」「夏炉冬扇」というのもありますが、「寒に帷子…」は生活の基本である衣食住の衣にまつわる言葉だけに、この表す意味はちょっと笑い事ではありません。


◆寒松千丈(かんしょうせんじょう)
中国の歴史書旧唐書の一節からとられた言葉で、厳寒の中の松は風雪に耐え千丈の時をへても緑を保ち続けるの意。「寒松千丈の節」というと、そのように忠節や節操を守り通すことの美徳を表します。
節操とは、信念をかたく守って変節しないことを表します。誰にも隷属することなく自分の人生は自分が作っていく今の時代には、主君への変わらぬ忠義を尽くすという意味は薄れ、ポリシーをしっかり持って生きていく、といった意味に使われていくことでしょう。


◆雪中松柏(せっちゅうしょうはく)
松千丈と同じ意味にも使われますが、雪の中でこそ松や柏の緑が際だつことから、困難に遭ってはじめて人の真価が現れる、といった意味にも使われます。古い言葉は時代の支配者に都合の良い意味に使われて来たケースが多いですが、今後は「こんな時こそポリシーを曲げずにやってきた君の出番だ、雪中松柏ってやつだよ」などと使われていく言葉になるでしょう。


◆鴨寒うして水に入り鶏寒うして木に登る
同じ寒さに対しても、カモはカモに適した方法で、ニワトリはニワトリに適した方法で対処する。ものごとにはそれぞれに適した異なる特性があるということ。
今も冬の池に水鳥が浮かぶ姿は見られますが、ニワトリが木に登っている姿を見たことがある人は少なくなってしまったのではないでしょうか。今の時代にこの言葉を出すと、「ニワトリが木に登るなんて異常事態だ!」などと言われてしまいそうです。


◆A good friend is as the sun in winter.
この書き込みを締めくくるにあたって、冬にまつわる言葉で一番好きなこれを、皆さんにお贈りしたいと思います。
良い友は冬の太陽のようなもの。これはことわざというより、名言というべきものかもしれませんね。英語圏でよく使われるフレーズのようですが、なにかと殺伐としている日本にこそ、こういう言葉が広がっていったらいいなぁと思います。誰かの冬の太陽に……なりたいですね。


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