大寒の卵」by id:TomCat


俳句の季語に「寒卵」というのがあります。寒の卵は滋養に富んでいるので、食べると一年中健康に暮らせる・・・・とか。最近は風水で有名な人の影響か、大寒の朝に生れた卵を食べると一年間お金に困らない、といった話も広く聞かれるようです。寒卵は寒の入りから節分までの寒中に産まれた卵のことをを言いますが、やはり太陽黄経300度、寒さが最も厳しくなる大寒の卵は、寒卵の中でも特別なのでしょうね。


さて、ニワトリという鳥の起源ですが、現在ではセキショクヤケイ、これは中国南部から東南アジアにかけての主に熱帯性のジャングルに生息している野鳥ですが、これが家畜化されたものとする説が有力です。


※注:
・東南アジアにはセキショクヤケイのほか、ハイイロヤケイ、セイロンヤケイ、アオエリヤケイといった近親種もいて、それらの交雑からニワトリが生まれたとする説もありますが、オックスフォード大学セントジョーンズカレッジにて学ばれた動物学者でもある秋篠宮文仁親王殿下が中心となって研究された論文(ニワトリの起源の分子系統学的解析:Proc. Natl. Acad. Sci., 93, 6792-6795)によれば、ほぼセキショクヤケイ単元説で確定であると結論づけられています。


このように元は熱帯の鳥ですから、当然の事ながら日本の冬のような寒さは苦手なんですよね。さらに一年中昼と夜がほぼ12時間ずつという赤道付近と違って、日本には四季による日照時間の変化がありますが、ニワトリの場合、夜が長くなってくると生殖腺の活動が不活発になってくるんです。屋根付きの養鶏場で採卵用に飼われているニワトリは、人工的に照明を点灯して一年中卵を産ませているわけですが、自然に近い地面で平飼いしているニワトリの場合、冬場はほとんど卵を産みません。


そんなわけで、寒中の卵というのは、昔はとても貴重だったんですよね。だから、冬に卵が手に入ったとすれば、それは大変な宝物だったわけです。これは食べれば特別な力が授かりそうです。


今でも平飼いのニワトリの寒卵は貴重品ですから、それが手に入ったら、ぜひ独り占めしないで、ご家族みんなで分けて食べてください。たとえば卵スープなんていいですね。これならたった1個の卵でも、みんなで分かち合って食べることが出来ます。


【材料】
・卵
・長ネギ
・片栗粉
・スープ素材 和洋中華お好みのだしの素、補助的に醤油、酒、味醂、塩、コショウ等々(だしに応じて適宜)


作り方はごくオーソドックス。鍋に湯を沸かし、お好みのだしの素と補助的な調味料でスープを作り、そこにネギの小口切りを加え、溶き卵を細く垂らし入れ、水溶き片栗粉を加えてトロ味をつけて出来上がり。


単純なレシピですが、片栗粉によるトロ味が今回のポイント。少ない卵でも、ちょっと汁にトロ味がつくことで、いかにも食べた!!という満足感が得られるんです。今でも、たとえば平飼いの烏骨鶏の卵なんてあまりスーパーでは売っていませんから、特に寒の卵は大変な貴重品です。もし、たまたま知り合いから1個だけ頂いた、なんていうラッキーがありましたら、こんな食べ方で、ご家族皆さんで福を味わってみてくださいね。


なお、大寒の日から立春までの期間中、中国では初候、日本では末候を「鶏始乳」といって、その歳の最初の卵を産む時期としていました。つまり寒卵は「卵の初物」でもあるんですよね。


その意味でも縁起物の寒卵。卵なんて一年中あると言わないで、この期間中に自然に近い飼い方で採卵される貴重な卵を味わってみる、という季節の楽しみ方も、取り入れてみてはいかがでしょうか。


『分かち合う 喜びも福 寒卵』


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