リブ・ラブ・サプリ〜SEASON

「来たる年も変わらない豊作を祈る越年餅搗き」by id:C2H5OH


うちの本家の方に伝わる習慣です。各家では鏡餅などにするために、暮れのうちに餅搗きを済ませますが、臼も杵も大晦日まで出しっぱなしにしておきます。そして年越し蕎麦も済んだ大晦日の夜に餅米を蒸かし、再び餅を搗き始めるのです。よいさ、ぺったん、ほいさ、ぺったんとかけ声も元気に、除夜の鐘撞きならぬ除夜の餅搗きが繰り広げられます。


23時59分数十秒。今年最後の一搗きです。よいさ、ぺったん。
年が明けます。新年明けましておめでとうございます。
さぁ新年初の一搗きです。ほいさ、ぺったん。
あとはまた元気良く餅搗きのかけ声が続きます。


搗き上がったお餅はまず各家庭の神棚に供えられ、その後、地域産の大豆や小豆で作られたきな粉やあんこを絡めて、家族や手伝ってくれた人に振る舞われます。こうして来たる年も変わらぬ豊作をと祈願するのです。


こうした深夜に餅をつく習慣はきっと珍しいと思います。この地方でも、こんな深夜に餅搗きをするのは、本家のある集落だけと聞いています。昔の暮らしでは、おそらく一日の始まりは夜明けと考えられていたと思いますので、私が想像するには、きっと夜明け前から搗き始めて、初日の出に照らされながら餅搗きが終わる、というパターンだったのだろうと思います。それが近代になって、日付が変わるのは午前0時という考え方が定着したのに伴って、深夜の餅つきになったのではないかと。電気の普及で深夜でも灯りが得られるようになったことも大きいでしょうね。


そのようなわけで、おそらく深夜に餅を搗くという習慣は最近になってからのものと思いますが、歳をまたいでの餅搗きという習慣は、誰にもその起源が分からないほど昔からあったようです。昔は新年で一つ歳を重ねましたので、大晦日には歳神様が歳を配りにやってくるという信仰もありました。そこで歳神様がやってきても元気に餅を搗く姿を見てもらうことで、歳をもらっても老いないで済む、という考え方もあったようです。


しかし現実には高齢化が進み、臼と杵で餅をつくイエは少なくなりました。それでも越年餅搗きの習慣は残り、大晦日の晩には電気餅搗き機で餅を搗き始めるイエもあるそうです。