イエコト・ミシュラン

「漆喰で洋室に日本の壁を作る」by id:Fuel


以前漆喰を塗った経験から、
http://q.hatena.ne.jp/1247633703/225549/#i225549
次にやってみたいのは、洋室の中に日本の壁を作ってしまうDIYです。例をあげればこんな感じの仕上がりですね。
http://kaiteki01.seesaa.net/article/113081064.html


まず部屋の壁に「柱」を演出していきましょう。こういう所に古民家を解体した時に出た古材などが使えたらいいですね。まだ電気もガスも普及していなかった時代の、囲炉裏や竈の煙でナチュラルにいぶされた古材が手に入ったら最高です。探すとそういう古材を扱う業者さんもあるようです。
今の家は天井裏の空間が少ないですし、構造も複雑ですから、前述の写真のような梁が剥き出しの天井とそれに伴う高い壁は演出不可能ですが、代わりにナゲシに相当する部分に、自然のうねりを生かした古材を梁っぽく渡していきましょう。
壁と木材との接合は、現代の住宅なら接着剤ということになるでしょうか。風情はありませんが、外観には関係しないので、ここは現代の発達した強度の高い接着剤を有り難く使わせてもらうことにします。


塗る漆喰ですが、これは以前使ってとてもうまく仕上がったこの製品か、それに類する物を想定しています。
http://www.plastesia.com/umaku-nureru/kounyu.html
自分で練って作る漆喰に比べて安直な感じがしないでもありませんが、この漆喰は伸びが良く、様々な材質との接着性も良好なので、たいていの壁の上にそのまま塗り込んでいくことが可能です。まるで粘度の高い塗料を塗り込んでいくような感覚です。下地作りが不要なので、既存の壁の上に被せて塗っていっても分厚くなってしまうことがありません。
合板や化粧板の上にも直接塗っていけるので、ドアの内側も漆喰仕上げにしてしまいましょう。硬化した後にポロポロ剥がれ落ちたりしないので、厚塗りしなければドアまでお揃いが可能です。もちろんドアの内側に襖風の枠を取り付けて、襖紙などを貼って仕上げてもいいですね。


漆喰は多孔質ですから、以前話題になった障子や畳などと同じく、湿度が高い時は空気中の水分を吸い込み、湿度が低くなるとそれを放出する調湿性があります。結露を防ぎ、常にサラッとした表面を保ちますから、ダニなどの多湿を好む生物の発生も抑えられます。
湿気を吸い込んだらカビが生えそうな気もしますが、漆喰の主成分は石灰ですから、カビには強いのです。昔の漆喰はツナギとして草や海草などから採取した粘着成分を使っていたので、押し入れの中などではややカビることもあったようですが、現代の漆喰はそのへんもカビにくい材質になっています。さらに漆喰は二酸化炭素と反応して硬化するので、いったん固まったら水分で柔らかくなることはありません。
また多孔質ですから、シックハウスの原因となる有害な物質も吸着します。同じく臭いも吸ってくれます。さらに嬉しいのは不燃性であるということです。漆喰で仕上げた壁は家の安全性も高めます。


今回はハザマさんも漆喰を生かした「凸凹(デコボコ)ウォール」のアイデアを提案されていますね。
http://d.hatena.ne.jp/ie-ha-te-na/20091207#Michelin
漆喰は本当にすばらしい素材です。
漆喰の原料となる石灰石の主成分は炭酸カルシウム。これを高温で焼いて粉にし、水を加えて練って塗りつけると、しばらくして固まって堅牢な壁が作れるということ。
つまり、炭酸カルシウムを熱して二酸化炭素を放出させ、
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  石灰石生石灰酸化カルシウム
  CaCO3 → CaO + CO2
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水を加えて消和し、
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  生石灰酸化カルシウム)→消石灰水酸化カルシウム
  CaO + H2O → Ca(OH)2
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それが空気中の二酸化炭素が反応すると炭酸カルシウムに戻って元のように固まる
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  消石灰水酸化カルシウム)→炭酸カルシウム
  Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O
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という反応は、人類が古代から知っていた知恵でした。原始的な漆喰は高松塚古墳の壁画部分などにも使われています。漆喰は日本だけでなく、ヨーロッパでもイスラム圏でも世界中で古くから使われ親しまれていた素材ですから、漆喰を使えば、和風洋風エスニック風などなど、あらゆる壁が演出できます。漆喰を住まいに導入することは、人類の築き上げてきた文化遺産の一部を暮らしに取り入れることだと思います。