「動物の童話で心を温める」by id:Oregano


寒い冬に、心温まる動物の童話はいかがでしょうか。私のお勧めは、椋鳩十さんの作品群です。全集物としては、ポプラ社の「椋鳩十全集」や小峰書店の「椋鳩十動物童話集」、そのほか偕成社文庫や大日本図書の子ども図書館シリーズなど、多数の出版社から刊行されています。
椋鳩十さんの童話のすばらしいところは、童話なのに、作り物ではない本物の自然界の姿が描かれているところです。物語はフィクションだと思いますが、本当に地球のどこかで起こっていてもおかしくないストーリーが描かれています。
そこには椋鳩十さんの自然に対する思いの深さがあります。椋鳩十さん子供時代に「アルプスの少女ハイジ」を読んでそこに描かれた自然の美しさに感動し、後にエマソンツルゲーネフなどのディープ・エコロジー(人も動物も植物も変わらない価値の命を持っているという考え方からスタートしていく自然保護思想。人間の健康や利益を守る目的の自然保護とは一線を画す)にも学んで、独自の動物童話の世界を切り開いたと言われています。
また、作家以外の顔としては、長く公職にあって、教育や文化の発展に力を注いできた人でもありました。大学卒業後すぐに教職に就き、執筆活動は宿直室で行っていたといわれています。戦後は鹿児島県立図書館長として日本の図書館活動の発展に尽力。今の図書館ネットワークの基礎も椋鳩十さんの力に負うところが大きいそうです。
そういう人の作品ですから、すばらしくないわけがありません。ほとんどの著作は小学生向けですが、大人が読んでも感動しますし、読み応えもたっぷりです。多くの人が子供時代に一作や二作は読んでいると思いますが、大人になって読み返すと、きっと新たな発見と感動をするでしょう。
ハードカバーの全集は全部揃えると一万円以上かかってしまいますが、日本の図書館活動の発展に尽くした先生の作品ですから、ぜひ図書館で借りてください。椋鳩十作品を借りに行くなら、木枯らしの吹く冬の道も寒くはありません。
最後に、私が持っている小峰書店の「椋鳩十動物童話集」のラインナップをご紹介します。


椋鳩十動物童話集 全10巻

椋鳩十動物童話集 全10巻

【全10巻の内容】
片耳の大シカ
月の輪グマ
きえたキツネ
大造じいさんとガン
子ザルひよし
金色の足あと
三日月とタヌキ
おかの野犬
太郎とクロ
やせ牛物語

一冊一話の長編から、短辺や詩まで、全10巻で約50作品が網羅されています。内容も、動物と人間との心温まるふれ合いから、親子の愛情を描いた物、動物の生態をリアルに観察した物、動物の知恵や勇気を取り上げた物、さらには猟師と動物との闘いを描いた物まで、内容も長さもとても多彩です。次々読んでいくと、これだけで一冬過ごせると思います。
さらに全10巻セットの中に含まれない次の5巻もあります。

屋根うらのネコ (椋鳩十動物童話集)

屋根うらのネコ (椋鳩十動物童話集)

カモの友情 (椋鳩十動物童話集)

カモの友情 (椋鳩十動物童話集)

栗野岳の主 (椋鳩十動物童話集)

栗野岳の主 (椋鳩十動物童話集)

ツルのおどり (椋鳩十動物童話集)

ツルのおどり (椋鳩十動物童話集)

たたかうカモシカ (椋鳩十動物童話集)

たたかうカモシカ (椋鳩十動物童話集)

寒い冬を、ぜひ心温まる動物の童話で過ごしてください。私もすでに読み終えている全集ですが、この冬も椋鳩十動物童話集で過ごしたいと思っています。


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