朝顔の実に過ぎし日の君想う」by id:C2H5OH


俳句の世界では朝顔は秋の季語。花より遅くなる種になると、もう完璧秋を表す季語になります。今年も朝顔を育てて種を採りました。
朝顔の種は、秋の海と似ています。朝顔の種を手の平に握ると、もう手の届かない遠くに行ってしまった過ぎ去りし夏の思い出がよみがえってきます。
あれはまだ中学生の時でした。自転車を走らせていると、庭先で朝顔の花を摘んでいる同級生の女子に出会いました。幼稚園くらいの小さな女の子も一緒に花を摘んでいました。目が合ったので、ちょっと自転車を止めて「よう」と声をかけると、小さな女の子がトコトコとやってきて、私に摘んだ花びらを差し出してくれました。ありがとうと受け取ると、これから花を絞って色水遊びをするのよとのことで、花びらを受け取ってしまった流れの都合上、なんとなく一緒に色水遊びに興じていたら、小さな女の子にやたらなつかれてしまいました。
小さな女の子にまた明日も遊ぼうと言われて翌日も再訪問。そんなことが何日も続いて、必然的にその同級生の女子とも、とても親密になっていきました。なんかこういうのいいなぁと、ちょっと初恋っぽい思いを抱いていたのですが、しばらくして、二学期が来る前に引っ越しをするんだと打ち明けられて呆然。
引っ越しの当日に会いに行くと、朝顔の鉢を託されました。家に持って帰りしばらくすると種が膨らんできました。夏が終わる頃、最初の種が採れました。もう帰らない夏の日を思って、ちょっと涙が出ました。そんな思い出のある季語が「朝顔の実」です。


なお朝顔は、子房が膨らんできたらお茶用の紙パックを被せておくと、実が割れても中の種がこぼれないので、確実に採取することが出来ます。採取した種は、通気性のある紙袋などに入れて保管しておきましょう。水分が籠もるとカビなどが生えやすくなります。


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