「なぜ畳の縁を踏んではいけないのか」by id:Fuel


畳の縁を踏むことは不作法な行為として嫌われます。なぜ畳の縁が避けられるのかについては、
・昔は畳の精度が良くなく、縁の段差でつまづきやすかった
・床下に敵が忍び込んでいた場合、畳と畳の間は槍などで突き上げられやすく危険だった


といった説もありますが、やはり一番有力なのは「紋縁(もんべり)」や「家紋縁(かもんべり)」に由来する説ではないでしょうか。


紋縁は主に社寺などで用いられる、縁起や格式などに由来する紋様を織り込んだ高価な材質で作られた縁のことで、畳と畳の境目でも模様の配列が崩れないように、慎重な作業によって仕上げられます。
http://www.tatami.net/zairyo/heri/monberi.html
このように細心の注意を払って作られる紋縁は祀る神仏への真心の証しですから、それを踏むことは神仏への真心を踏みにじることに通じてしまうと考えるわけです。


またそれなりに由緒ある家の畳には、やはり格式や家系を示す紋様を織り込んだ物が多く使われました。昔は「畳の縁を踏むことはご先祖様の顔を踏みつけることと同じ」と言われて戒められたそうですが、そうした考えは、ここから生まれてきたと言えそうですね。


さらにもう一つ、なるほどとうならされる説がありました。それは、畳の縁には動植物を表す柄も多く使われてきましたから、そうした紋様を踏まないようにすることで、小さな生き物や草花を慈しむ心を育んだ、という説です。


仏教では殺生を厳しく戒めますから、まだ動物愛護などという考えが生まれていなかった時代から、日本にはすばらしい命を愛しむ文化があったんですね。こういう日本人の心優しさが畳の縁を踏まない文化を作ってきたと考えると、この伝統はいつまでも大切にしていきたいと願わずにはいられません。


今では「縁(へり)」は「縁(えん)」に通じるということで、畳の縁を踏みつけると良縁が逃げるとも言うそうですね。たしかに、どんなに姿形に気を配っていても、ちょっとした行動で台無しになってしまうことは多々あります。逆に、畳のヘリに気を配る作法から生まれる縁もあるかもしれないと思うと、畳のヘリは意外な「“縁”起物」と言えるかもしれません。色んな意味で大切にしたいFORTUNEアイテムです。


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