「太陽の下でお祭りの山車引き!」by id:CandyPot


私は子供のころ一度引っ越しを経験しています。その懐かしい町に住む友だちから、お祭りおいでよと誘われました。小さな神社のお祭りですが、懐かしい思い出がいっぱいのお祭りです。早いうちから予定を立てて、心待ちにして出かけました。
現地に着いたのはお祭りの前日です。もう町はすっかりお祭りじたく。家々に御祭礼の提灯がさがり、町のあちこちにお祭りの灯籠も立てられています。もう神社には演芸の舞台ができていて、スピーカーからはお囃子が流れていました。
夜は友だちの家に泊めてもらいました。私が来たというので、懐かしい同級生がいっぱい集まってきてくれました。ほら○ちゃん、あの子も大学からずっと東京なんだよ、えーどこ?、今、荻窪、わー、けっこう近いよ、なんて、町を離れている人たちが、みんなお祭りには帰ってきます。
翌日は、小さいですが、山車が出ました。私もお祭りの半纏を貸してもらって、一緒に引っ張りました。これ、子供のころからの憧れだったんです。せいやせいやと引っ張りながら、太鼓の音も勇ましく町内を練り歩きました。何人か横笛を吹いている同級生もいます。すごいなぁ、みんな練習してるんだ。
やがて山車は神社の下までやって来ました。ピーッとホイッスルが鳴らされ、お囃子が止みます。祭典長の腕章を付けた人が山車の上に上り、
皆さん、これから山車はこの坂を上って境内に上がります。これより安全のため、山車の後ろは立ち入り禁止とし、全員山車の前に回って引いてください。例年、一度で上がれたためしがありません。今年は何度のチャレンジで上がりきるか、皆さんの奮闘をお願いします。
なんていうあいさつがありました。そうです。けっこうな坂道を山車が上っていくのです。これがこのお祭りのハイライト。みんな、腕に力がこもります。
そーれ!かけ声とともにお囃子が再開され、それに合わせてみんなで引いて行きました。うわぁ、すごく重い!上がりません、動きません。せーの!せーの!動いたっ!動きましたが、きゃぁー、下がってく!だめ、下がっちゃだめ!うぅぅぅぅぅぅぅ!もっと集まれ、みんな手伝え、せーの、せーの!今度は上がりました。どんどん山車は境内目指して進んで行きます。お囃子のテンポが速くなってきました。せいやせいや、せやせやせやせや!!引いている私たちのかけ声のテンポも上がります。ついに上がりきりました。フッと山車が軽くなります。祭殿の前まで引いていって、そこでさらにお囃子が続きます。
いったい何分かかったでしょう。実際には短い時間だったのだろうと思います。でも私には、何時間にも感じられました。うわぁ、手がじんじんする、膝が笑ってる、あー、もうだめ、山車を引いた女子はみな、抱き合って体を支え合いました。男子はすごいね。まだ元気いっぱいでお囃子の太鼓を取り合っていたりしました。
汗だくだく。飲み物の差し入れが回ってきて、やっと一息です。太陽の下、懐かしい友だちに囲まれて、本当にいい汗が流せました。次はお正月かな。さいのかみの時、また帰ってくるよ。そう約束して別れました。この町、離れて何年たっても大好きです。


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