「七夕馬・七夕牛」by id:tough


関東から東北、新潟にかけての東日本には、七夕に藁や草で馬や牛の形を作る習慣がありました。東京都北区では、2本の七夕飾りの間に縄を渡し、そこにマコモで作った雄雌2頭の馬を吊ししたそうです。これは牽牛と織女それぞれの馬で、二人がそれに乗って夜空駆けて会いに行くと言われていたそうです。
千葉でも主にマコモを材料に作られます。千葉は広く、馬の形も行事も地域によって様々ですが、面白い風習に次のようなものがあったそうです。七夕の早朝に子供が草の馬や牛を引いて野原や水辺などに行き、そこで草を刈るのです。刈った草を馬や牛に背負わせて、再び引いて家に戻ります。家に着いたら笹飾りの下に刈った草を敷いて、馬や牛を綺麗に飾り立てて乗せてやります。さらにうどんや赤飯を供える場合もあったようです。これは農耕馬や農耕牛に感謝する行事ですね。ちなみに、馬だけでなく牛も作るのは、千葉県だけの特徴のようです。
埼玉では、お散歩わんちゃんのおもちゃよろしく、草の馬を子供が引いて歩いたそうです。これの持つ意味はいまいち不明ですが、子供が将来上手に馬を扱える人になって豊作に恵まれるようにとの願いが込められていたのかもしれません。
宮城では、七夕の一日を、子供は藁で作った馬の人形で楽しく遊んで過ごしたそうです。夕方になったらバイバイして、馬は家の屋根に投げ上げられます。これは貴重な財産であり家族同様に大切にされてきた馬と、子供との絆を結ぶ行事だったのではないかと推察します。また仲良しになった馬が屋根の上から子供を見守ってくれるという、子供の成長を願う意味もあったのではないかと思われますね。
そのほか、二頭の馬を向かい合わせに飾る習慣の地域は多いようで、二頭の馬でも前述のように東京都北区では牽牛と織女の乗り物でしたが、その他の地域ではご先祖様をお迎えする馬と説明されることが多く、七夕の行事といっても「プレお盆」と言うべき目的を持っているようです。
今はもう、七夕に馬を作る習慣は、ほとんど残っていないと思います。私も七夕馬などという行事の実際は、見たことも聞いたこともありませんでした。たまたま子ども向けの「七夕馬を作ろう」という行事の案内を見て、いったい何なんだと調べてみたのが、この風習との出会いでした。
今再び、長く失われていた七夕馬の習慣を復活させてみようという機運が、各地で広がっているようです。皆さんの地域にも七夕馬の風習がないかどうか、ぜひ調べてみてください。


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